B5版

ビリーブ 未来への大逆転のB5版のレビュー・感想・評価

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)
3.3
男の子だから足が速くないと。
女の子だからしっかりしてる。
謎の違和を飲み込み続けて大人になる頃に仕込まれた毒をようやく吐き戻す、そんな令和に観る映画。

始まりの懇親会は、序盤から鈍器で殴られるように痛烈なシーン。
「君たち女性が男性の席を奪ってまで我が校に入学した理由は?」

ここは前時代的価値観がいかにナンセンスを示すシーンのはずなのに、
女子の合格者を不当に落とすことをつい最近まで黙認してた大学を有する本邦にとっては実に見慣れた絵面なので、日本においては意図が上手く嵌ってないんですよね。
22世紀なのに50年前のアメリカの進歩率となんら変わらない事実、改めてヤバすぎ。

敵味方から降り注ぐ糾弾の嵐を踏み越え、法廷で主人公が奮闘する様子、緊迫した空気と一発勝負の舌戦、ハラハラして見応えありました。法廷劇って普遍的に面白く感じる。なんでだろう。

この映画の題材はフェミニズムだが、他と一味違う点は主人公が弁護し助ける存在が男性だというところだろう。
既存の性差別は女は言わずもがな、規範からはみ出した弱者男性にも冷酷さを発動するという実態は中々表沙汰にはならない。
「男性は強くあれ、男性は稼ぐべきだ」という固定観念を元に、スタンダードを走れる男だけが我が物顔で世の常識とやらを享受できるのだ。

社会の歪みを正すために必要なのは、男女関係なく弱者となってしまった人達が団結することなのだ。
私たちは生き物で、その歴史が積み重なるのに合わせて約束事も前提も変わっていく。
仕事をする上で私もつい先例だけを頼りたくなるのだが、日々世の中は廻りつづけている。
私たちは書き終わることのないルールブックに疑問を常に投げかけなければならないのだ。成熟した未来の社会のために。
B5版

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