馮美梅

存在のない子供たちの馮美梅のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
推定12歳の主人公ゼインは人を刺して懲役5年の刑を受けていた。その彼が今度は自分の両親を訴えた。そこから彼がどうして今この場にいて、両親を訴えたのかが描かれていきます。

子どもが親を訴える「自分を産んだ罪」。
そこまで言われても両親は自分の事ばかりの発言しかない、これを聞くだけでもゼインにとっては辛い事だろう。子供に対する愛情なんてこれっぽっちもない、言葉では「愛してる」とか言いながらもその言葉の先にはやはり自分たちがいかに苦しくみじめな生活を強いられているのかということ訴えるばかり。

印象的だったのは、すぐ下の妹が家主に気に入られていること。
ある日、妹に初潮が来たことを知るゼイン、妹はそんな事すら無頓着なのに、ゼインはそれを両親に知られたら家主に妹が売られてしまうと察知し、生理用品や普通は母親に教えてもらうようなことを全て妹に教えながら、大人に絶対知られてはいけないと話すシーンはなんだか切ない気持ちになってきました。

しかし、そんな彼の努力もむなしく、妹は家賃の代わりに家主の元へ嫁がされていく。まだ11歳なのに…そしてそれがのちの彼の犯行のきっかけになっていく…

子どもたちは日々学校にも行けず働く。しかし親は文句を言い、自分たちの置かれている状況に嘆きながらも、働きもせず、でも子供だけはどんどん作る。働けよ!と言いたくなる。

ゼインを演じていたゼイン自身も難民として生きていたこともあってか、世の中を憂う瞳の表情がとても印象的でした。

ゼインじゃないけど、子供の頃、テレビでアメリカの子供が自分の親を訴えたというニュースをやっているのを聞いて、思わず「いいな」と思った。もし日本にもそういう制度があったら今すぐにでも自分も両親を訴えられるのにということを思い出す。

結局、裁判の結果はわからないけれど、心配していたラヒルとヨナス親子も無事再会出来ていろんな人たちの助けによって良い方向に進んでいきそうだったのが救いでした。

演じたキャスト達も、この映画さながらの人生を送ってきているということも、観ている人たちに感情を揺すぶられる要因なんじゃないかなと思う。
馮美梅

馮美梅