みかぽん

あなたはまだ帰ってこないのみかぽんのレビュー・感想・評価

あなたはまだ帰ってこない(2017年製作の映画)
3.0
↓↓物語の結末を書いているので、知りたくない方は以下ご容赦ください。





ナチス占領下のパリ。
ゲシュタポに捕らえられた夫を狂わんばかりに待つ主人公(小説家のマルグリット・デュラス)。
彼女の作品を崇拝し、静かに下心を燃やすヴィジー政権側の刑事は、夫の情報を口実に彼女と過ごす時間を画策し、デュラスはそれを知りながら夫のために誘いに応じ、ギリギリの攻防でせめぎ合う。そうした危うい駆け引きに、抵抗運動展開中の仲間達は背筋冷え冷え。

そしてようやく戦争が終わり、遂に強制収容所から危篤状態の姿で助け出された夫が彼女の待つ家に戻り…。
通常であればここで Fin ?(いやいや、これだけ引っ張ったんだから、旦那が意識不明のまま終わんないでしょ)が、突如2年後に時は飛び、彼女が夫と別れたことを告げるナレーション。その夫に至っては、一言も発することもないままその後、「夫は収容所から生きては帰って来た」の独白でエンドロール。

え…っ😳
まさかこれで終わりですか?💦
あぁ、そう要するに彼女は別れを選択したのね…。(なんで?)えぇと、それは旦那さんが戦争で人を変えてしまったからなの?(どう??)

観客の取り残され感は半端なく〜〜😨💧

そこで私は、そういえば…と、デュラス脚本で1962年に映画化された「かくも長き不在」をおもむろに思い返して再考…。

こちらの作品の女主人公も、同じくゲシュタポに連れ去られたまま帰らぬ夫を、待って、待って、待ちつくす奥さんのお話で。
十数年後に発見した夫は記憶喪失の浮浪者で、それでも彼女はその男を夫と確信するのだけど、彼にしてみれば彼女のことはまるで記憶にないので戸惑い、その奥さんの圧に対して怖れ慄くばかりで。
そして物語の最後の最後、衝撃の一言によって、観客は彼に起こった記憶喪失の理由を確信する。
その後、彼が再び彼女の目前から消えた後も、彼女は以前のようにまた夫を待ち続ける、と言うお話しだった。

デュラスは現実の夫と別れた後も、この「かくも長き不在」で再び夫を待って、今度は最後の最後まで〝元通りの夫〟と共に暮らせるしあわせな日々を持ち続ける主人公として完成させ、物語の中に閉じこめた。

もの凄い元夫への執念。囚われのデュラス。と同時に、戦争さえなければと…。
可哀想過ぎるデュラス…(´༎ຶོρ༎ຶོ`)。

しかし再び振り戻って本作(=「あなたはまだ帰ってこない」)は、言うなればデュラスのリアルを描いたものだけど、これはもう観客が彼女のことを知っているのを前提に描かれたような荒っぽさで、私はたまたま「かくも長き不在」を知っていて、とりあえず首の皮一枚で彼女と繋がれたような気にはなれたけど、もし観客が彼女のことを何も知らなければ、ただただ唐突感とその後のモヤモヤだけが残る映画ではないかと😢
だから何だかとっても勿体無く、デュラスがお気の毒な感じです😞😞⤵︎⤵
みかぽん

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