敵の正体がいまいち不明だったが、
愛の力が強すぎて感動した..

音楽だけは良い。もはや別物として見た方が良いと思う。

・ジャンル
ダークファンタジー/アクション/バイオレンス/アメコミ/クライム

・あらすじ
愛を受けずに育った元薬物中毒者のエリックは更生施設で似た境遇の謎多き女性シェリーと出会う
2人が打ち解けて間も無く施設にある集団が現れる
正体はとある秘密を巡りシェリーを狙う組織の者達であった
一行から彼女を助けるべくエリックは共に施設を脱走
恋に落ちた2人は身を隠しながらも幸せな日々を送っていく
しかしある日、追っ手達は再び彼らの前に現れ両者とも殺害
その後、エリックはこの世とあの世の狭間で目を覚まし人ならざる存在クロノスに導かれ復讐を持ちかけられる
犯人である組織の者達は悪魔と取引を交わし無実の人々の命と引き換えに永遠の命を手に入れた殺さねばならない存在なのだと…
そうして不死の復讐者としてこの世に舞い戻ったエリックは組織を追うと共にシェリーの抱えていた秘密を調べ上げるのだがそれはあまりに壮絶な物で…

・感想
‘94年に公開されたジェームズ・オバー原作による同名漫画作品の実写版
故ブルース・リーの長男ブランドン・リーの代表作にして遺作となったその作品を現代版としてリブートさせた今作
主人公が同じなのでどちらかと言うとストーリーをガラッと変えたリメイクといった感じの内容となっている

エモ・ラップ隆盛期の代名詞である故Lil Peepを思わせる主人公エリック元来のビジュアル
恋人となる女性シェリー役にオルタナティヴな作風で人気を博すミュージシャン、FKA Twigsを起用
「ソウ」シリーズでお馴染みのライオンズ・ゲートによる配給が予感させるゴア描写の増加
こういった点から期待は大きかったものの実際に見終えてみると粗が多く何とも言えない仕上がりだった

まずはエリックとシェリーの絆について
2人は更生施設で出会い恋に落ち、やがて共に殺されるがエリックは蘇り復讐の鬼となる
ここで問題なのが小洒落た演出ばかりで2人の共依存に説得力を生み出せぬまま復讐へと展開していく点
過去作ではクロウとなる主人公ときっかけである恋人は最初から結ばれているので違和感なく観られたけど今作は雰囲気で押しすぎていたかな…

次にクロウの描かれ方
エリックはクロウとして蘇っても後半の転機が訪れるまでは生前そのままの容姿
それに加えて過去作の様にカラスが相棒として描かれる事が無いので蘇生した不死の死者という設定が無ければクロウ感はあまり無い
彼を導く魂クロノスも見た目は普通の男だからカラスの様なオーラなど放てる訳もなく…
ただし傷を負えばしっかりと痛みを覚え悶えるという点は悲哀が増していて良かった

そして敵について
今作の敵である組織のボス、ローグは悪魔と契約を交わした人物
それが亡きヒロイン、シェリーの抱えていた秘密に大きく関わってくるんだけどしばらくはひた隠しにされたまま話が進んでいくし組織の直接的な悪事の描写も限られているので物足りなさがある
ゴア描写が強化されていただけにもっと惨い罪を平然と犯す様が見られたら尚良かったかも？

そんな感じで全体的にフワフワしていて悪い意味での白昼夢感が漂い続けていたのがモヤモヤした
そもそも導入で描かれるエリック少年期の喪失の時点で雰囲気映画なんだなと察せてしまうのもね…w
ただ終盤、新たな“契約”を交わし完全体となったエリックの繰り広げる殺戮はこれまでのシリーズ作品では見られなかった陰惨さでイイ
そこがかっこよかっただけにもっと細部まで緻密に話を組み立ててくれていたらなぁと残念でならない
ブランドン・リー版を超える事はまず無理だからこそ堅実さが欲しかったというか…

あと音楽もいっそシェリー役のFKA Twigsに寄せてオルタナティヴさがより高い最近のミュージシャン達の楽曲を起用すべきだったと思う
その方が雰囲気映画なんだしキャストにマッチして世界観の独自性が高められたかと