晴れない空の降らない雨

宇宙の法―黎明編―の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

宇宙の法―黎明編―(2018年製作の映画)
1.0
 礼拝堂と化した映画館で2時間の拷問に耐えてきた。たとえば冒頭で主人公と親友が言い争い、それが後で親友が悪落ちする前振りなのだが、流れが不自然すぎて「ためにする」感ありまくり。『神秘の法』あたりから強かったオタクカルチャーに対する雑なリスペクト(というかテンプレの引用、というかメーテル)も終始つづく。最初から最後までこんな調子だから、半分くらい経過したあたりで「何でもいいから早く終わってくんねーかな」という気持ちになってきた。
 何より、作を追うごとに宗教というより政治色を強めるメッセージ性が、いい加減耐えがたい域に達してきた(しかも作中で論理が破綻しているから手に負えない)。ちなみに本作のcv. 子安武人である「地球神アルファ」様は、金星での「文明実験」の成果をふまえ地球文明を築くことにしたのだが、その際わざわざ男と女という2つの性をつくり、互いに求め合うようにした、そうである。文脈上まったく不必要に挿入されるこの説明は、どう考えても昨今のLGBT云々にケンカを売ったものだろう。
 一言でいうなら、「アニメアイコンのネトウヨアカウント」が、カルト宗教アレンジを加えられてアニメになったような作品である。
 
 お話もさることながら、作画が低クオリティで驚いた。いちいち覚えているわけではないが、以前よりもレベルが落ちている気がする。まぁ前作の『UFO学園の秘密』も冒頭だけ背景モブがめちゃくちゃ動いていて「なんだこれ『消失』か」と思ったのに、そこで力尽きたのかその後はガラガラの校内、CG頼りのバトル、といった感じではあったが……今作は背景棒立ちの絵からして雑。戦闘シーンは、アップや遠景からシルエットをぶつけあう単純な動きなどで誤魔化してばかり。海外スタジオに外注したと思しきCGだけゲームレベルだが、それはそれで作画部分とのギャップが甚だしい。
 
 やたらと多い挿入歌が癒やしだった。幸福の科学映画の歌は毎回すばらしい(最高傑作は『仏陀再誕』の主題歌「悟りにチャレンジ!」である)。まず、レプタリアン(前作の悪い宇宙人)の女王が、自分の惑星がぶっ壊されて命からがら逃げ出すシーンで、唐突に現れるエロス神とともに掛かるラブソング。場違いにも程がある。そもそもこの宗教にギリシャ神話が入り込む余地皆無だと思うのだが、妙にギリシャ神話推し。
 この女王さまが主人公に惚れるツンデレキャラで事実上のヒロインなのだが、彼女が芽生えかけた愛情に苦しみ、You are my nightmare~♪とかいった感じの英語習いたて中学生みたいな挿入歌がかかる頃には、もはや自分が一体何を見せつけられているのか分からなくなっていた。