うめまつ

真実のうめまつのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.0
紅茶を淹れた時のふわっと香る金色の匂いとか、枯葉を踏んだ時のカサカサと耳に気持ち良い音とか、真夜中に目が覚めて独り占めする月とか、鞄の中に迷い込んだ桜の花びらとか、詩の中に自分を見つけた時の甘美な驚きとか、そんな日常に溶け込んで見過ごしてしまいそうなささやかな喜びを、そっと差し出されたようなラストだった。

「真実」なんて重たくてピンと張り詰めた響きなんだろう。あまりこの映画には似つかわしくないような気がする。逆に言うと真実は大袈裟なものじゃなく、本の栞みたいに日々に紛れていて、何処に忍ばせるかは人それぞれということなのかな。挟んだ場所が1ページ違うだけで見方は大きく変わってしまう。揺らいだ感情はいつしか記憶となり、記憶はいずれ真実となって心の中で象られる。それは放っておくとトゲトゲになってしまうから、たまに取り出して丸く磨かないといけないな。自分と誰かを不用意に傷つけないように。
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