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真実のKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

真実(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

 是枝監督の新作はおよそシネコンには似合わない作品でした。恵比寿ガーデンシネマや、文化村ル・シネマで上映されてそうな仏映画といった趣で、案の定客は超少なかったです。

 鑑賞中もまったりした雰囲気で、鑑賞直後も何かえらく地味だったなくらいの感想しか持ちませんでしたが、反芻しているうちに良さを感じるようになるという謎体験をしました。是枝マジック!


 さて、本作は母と娘の葛藤と和解を描いた作品…と思いきや、実は主人公の老女優ファビエンヌが、今は亡き親類でおそらく天才女優・サラの亡霊から解放される物語だったように思います。
 劇中で語られるサラはとにかく完璧。ファビエンヌよりも天才で、ファビエンヌと違って母親役もこなし、娘のリュミールはサラに懐いている。ファビエンヌはサラの役を監督(プロデューサーだったかも)から寝取ったりして、嫉妬・コンプレックスだけでなく後ろめたさも感じている様子。とにかくファビエンヌは不在のキーパーソン・サラに縛られた人生を送っているのです。
 そしてサラの再来と呼ばれる若手の天才女優・マノンと共演し、しかも若きマノンの娘役を演じることになるのです(劇中劇の内容はSFっぽい設定で、マノンだけ歳をとらない)。
 ファビエンヌは恐れます。マノン=サラと向き合うことで、女優としての自分を否定されるのではないか。つまり人生の否定。この恐れとの闘いが、本作で一番印象に残りました。
 しかし、この辺で飽きてしまい、この先の展開は詳しくわかってません。


 なのでこの後、サラの亡霊を乗り越えたファビエンヌが娘リュミールと和解するっぽい場面がありますが、あまり理解できていません。もしかして、これってリュミール脚本の演技では?なんて乱暴な想像をしてみたりして。リュミール脚本書いていたし、よくわからないけど、そんな印象を抱いたんですよ。こだわっているのはリュミールだし、ファビエンヌにとってはサラとの関係に比べると重要なテーマではなさそうに思えますし。
 和解の脚本を当人同士が演じる。すると情動にも変化が起きて、本当の和解にはいかないものの、2人の関係には小さな変化が生じる(まぁリュミールにとってはせいぜい「やれやれだぜ」くらいのものだとは思いますが)。ファビエンヌにもかなりリアルな気持ちが生じて、だからこそ「(マノンとのシーンを)撮り直したい!」と本気で駄々をこねたのかも、と想像しました。

 流石にそんなわけないとは思いますが、このようなヘンテコな見方もしたくなるくらい、本作は是枝マジックが効いていて一筋縄にはいかないです。わかりやすい感動はなく、割と多様に解釈できる作りになっているように思いました。

 すごく面白いわけではないし、自分の深い部分に突き刺さる作品ではないですが、惑わされつつもじんわりと感じ入るガーエーでした。


 演者について。マノン役の女優さんはとにかく素晴らしい美女で、品もあるし笑顔が超チャーミングだし言うことなかったですね〜!
 ドヌーヴはオバQみたいになっちまったな〜という印象。昔からちょっと骨太グラマーな雰囲気があったので、高齢になるとこんな感じになるのね。やはり、イザベル・ユペールみたいにスレンダーなタイプだと高齢になっても美しさは保てるように感じます。完全に個人的な好みの問題ですが。歳食ってゴツくなるのがダメなのかも。メリル・ストリープも同じ理由でダメだし。
 ジュリエット・ビノシュさんには是非ともそのままスレンダーにお年を重ねて欲しいと願っています。
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