せーじ

町田くんの世界のせーじのレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
4.1
【感想に入る前に】
どうも、お久しぶりです。11月はもう少し何本か観たかったのですけど、とあるスマホRPGにハマってしまいまして。予定が全部吹っ飛んでしまいました。やっと落ち着いたところですw 12月は話題作も多いですし、年末年始はまた企画をやりたいと思っていますので、皆様おたのしみに。
(タランティーノツアーは、引き続き継続していきます)

ということで。

244本目。
Filmarksでもとても話題になっていて、自分も気になっていた作品だったのですが、観る機会を逸してしまっていた作品。久しぶりに地元のTSUTAYAで気になる作品を探し回っていたところ、目に留まりレンタル。

うん、良かったです。
こういう作品、自分はとても好きですし、ちょっと惜しいところがあるのかもしれないのですけれど、楽しく観ることができました。

良かったところ。
まず目についたのが、映画としてのキレ味の良さ、でした。
カット割りのキレが鋭く、余計な部分はダラダラと見せつけない様な語り口で、独特のテンポがあるように感じられました。感心したのが、「流石にこれは過剰でベタが過ぎるんじゃないのか…?」と思う様な展開を見せた直後に「でもそれは"彼女"が観ていた夢だったのです」という種明かしを簡潔に見せる演出でスパンとぶつけてきたところでしょうか。それまで結構半笑い気味に観ていたのですけど、ちょっとそこで「…これはちゃんと観ないとマズいな」と思い直してしまいました。するとそこから、それまで過剰過ぎてヘンに見えていた町田くんのオーバーアクションや、前田敦子さんをはじめとする、高校生と呼ぶには無理があるキャスティングなど、違和感を感じていた部分がスルっと腑に落ちて、一気に映画内の"世界"が実感を持って立ち上がってくる様な感覚になれたのです。気がついたらどっぷりとこの作品に入り込んでしまっていました。
それもこれもおそらくは、役者陣の的確な演技とベタなようでいて隅々まで計算し尽くされている演出、そしてそのアウトプットのキレ味の良さがそうさせているのではないのだろうかと思います。ベタさを逆手に取る…というよりも、ベタさに乗っかってその先の先まで突っ走るような作り…なのかもしれません。

一方、物語のテーマはシンプルなようでいて実はかなり哲学的で、「人を好きになるというのはどういうことなのか」や「悪意がはびこる世の中において、人は善意を貫ききることができるのか」、そして「皆にやさしくできるという"善意"と、たった一人大切な人を選ぶ"愛情"は両立し得るのか」という、簡単に答えが出せない問いを観客に投げかけてきます。
この作品そのものが、それらの問いに対して完璧に答えを出している…とは思いませんが、答えとしてそれらと向き合おうとする一つの例を、町田くんと猪原さんの姿を通して観ることが出来た気はします。クライマックスのファンタジックな展開が賛否を呼んでいるようですが、そこに至るまでの流れと、町田くんがそのことに対して全力で向き合う姿や、ヒロインが町田くんのことを知っていく表情は、すごく良かったなと思いました。

※※

ただ、惜しいなと思ったのが、クライマックスの「風船」の活用の仕方でしょうか。あの話の流れだと、町田くんの頑張りを邪魔するような存在として見えてしまって、その後の展開との整合性が取れていなくてちょっと上手くないなと思ってしまいました。あの不思議な男の子も含めて、もうちょっとそこは話の伏線として作りこめた様に思います。
それと町田くんのポンコツなところを、もっともっとセリフだけではなく具体的に映像として観たかったです。ボーリングだけだと足りないですし、美術の木工はむしろ違う才能があるように見えてしまったので。
とはいえ、よくある邦画っぽいルックスで、配役やプロットがフィクショナルなのに、映画としてのつくりはとてもよく出来ている作品だと思いました。主人公とヒロインを演じた二人もすごく頑張っていて、脇の錚々たるメンツに負けてないポテンシャルを出しきっていると思います。
気になった方はぜひぜひ。
せーじ

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