まずはこの挑戦を支えた製作陣を称えるべきであろう。
ほぼ全編モノクロ、モノローグ中心と決めた時点で、「ノワール気取り」「芸術性の押し売り」という批判の声があがることは容易に想像できたはずだからだ。しかし、このチームはひるまなかったわけだ。
でも、観客としてはちょっとしんどかったけど(笑)
「罪と罰」の主人公は自発的に「自分は選ばれた人間だ」と考え始めていたように思うが、本作の主人公は銃に選ばれてしまった。それが面白い。
もちろん、今の日本では大抵の人はすぐに警察に届けるだろう、という批判もあろうが、それはちょっと粋じゃない。それではドラマは始まらないし。
公開中の「斬、」も武器の使用に悩みもがく主人公。「武器と人」は永遠のテーマながら、今の日本で同時期にこの二作が公開されたことには偶然以上の何かを感じる。クリエイターたちがそのことを真剣に考えなくてはならない状況に世の中がなりつつあるのか、とか。
広瀬アリスは正直ちょっと可哀そうに見えてしまった。モノクロ映像に映えないタイプなのかもしれない。女性的な要素は日南響子にすべて持っていかれてしまったように思う。
また、父子共演は面白かったし、わくわくもしたが、あそこでの登場はカラー映像への転換とあわせ「出オチ感」も。
例えば、父が刑事役だったらどうだったんだろうと夢想してしまった。