これは刺さる人にはとことんまで刺さる映画だろうなあ、と思った。
タイトルやパッケージのほんわかした雰囲気とは裏腹に、映画はえげつないほどに残酷だ。
学校では孤立しいじめられ、家では父親に暴力を振るわれる中学生のミレ。
彼女にとっての安らぎは、ネットゲーム「ワンダーリング・ワールド」で遊ぶことだけだが、そのゲームもいきなり閉鎖が決まってしまう。
もちろん、小さな救いは描かれる。
学校ではクラスの人気者の美少女と「小説を書く」という秘密を共有し、仲良くなる。
好きな男の子から特別に気を使ってもらうこともある。
でも、そんなわずかな救いすらも簡単に崩れ去り、孤独が容赦なく彼女を襲う。
こんなふうにならないでほしい、ということばかりが現実で起こる。
想像しうる限り最悪の方向にしか世界は進まない。
この救いのなさには、心が痛んだ。
そんななか、ゲームで知り合った唯一の友だち「ヒナ」とミレは現実世界で再会する。
ここでようやく救いになるのか、と思いきや、これまた救いとはかけ離れた展開を迎える。
「ヒナ」は死のうと決めていて、やり残したことをひとつひとつクリアしている最中なのだ。
結局、ミレも死を決意し、二人でやり残したことを次々とこなしていくことになる。
つまり、死へ向かうための道行きだ。
もう、苦しくて苦しくてどうしようもなくなってくる。
それは事態が好転したかに見えても変わらない。
根本では問題は何も解決していかないためだ。
これで終わってしまったら絶望しか残らないところだが、映画は答えをちゃんと用意している。
ミレが起こしたほんのちょっとの勇気が状況を変えていく。
その勇気が自分のためのものではなく、他人のための勇気というのがジーンとくる。
孤独になってしまう時、人は周りが見えなくなる。
でも、そこで必要なのは誰かをちゃんと見ることなのだ、と気づかせてくれる。
ミレの号泣シーンと最後のたったひと言に、すべて救われたような気がした。
苦しくてどうしようもないけれど、観終わったあとは気持ちよくなれる映画だった。