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パピヨンのハルのレビュー・感想・評価

パピヨン(2017年製作の映画)
3.6
1973年版のオリジナルを観たあとでリメイクを観るのと、オリジナルを観ないでリメイクだけ観るのとでは、当然ながら、受け取る印象が変わってくる。前者は、どうしてもオリジナルと比べながら見るので、少なからず、不満を持つことになる。要するに、何が言いたいかというと、今回のリメイクはオリジナルには及ばなかったということである。

1973年版では、「猿の惑星」のフランクリン・J・シャフナーが監督を務め、ハリウッドの異端児・ダルトン・トランボが脚本を担当した。主人公のパピヨンには、永遠の反逆児・スティーブ・マックイーンが、偽札作りの天才ドガには、「卒業」、「真夜中のカーボーイ」で知られる名優ダスティン・ホフマンが、それぞれ配された。そして、音楽は、同じく「猿の惑星」で前衛的な音楽を披露したジェリー・ゴールドスミスが担当した。文句のつけどころのない、盤石の布陣である。

これを踏まえたうえでリメイク版を見ると、どうしても、見劣りがしてしまう。

まず、肝心のパピヨンにしてからが、オリジナルを超えられていないのだ。これはチャーリー・ハナムが悪かったという意味ではない。彼が超えようとするには、スティーブ・マックイーンの存在はあまりにも偉大過ぎたということだ。尤も、ハナムにも多少の努力の痕跡は認められるが、それでも、そのパフォーマンスからは、マックイーンが醸し出したほどの強烈さや悲壮感は伝わってこない。

そして、シナリオ。

ダルトン・トランボが考案した世界観(アンリ・シャリエール原作小説には、パピヨンとドガの友情の描写はない)をそのままに、徒刑場での過酷極まる生活と壮絶な脱獄劇、そうして、涙なくしては観れない男の友情物語は健在であった。ただ、余計な説明を入れたために、いささか冗長になってしまった点と、脱獄映画としての魅力が薄まった点は否定できない。オリジナル版が「脱獄・男の友情の映画」だったのに対して、本作は「伝記映画」の印象が強いのである。尤も、オリジナル版も、アンリ・シェリエールの実体験をベースとした伝記犯罪映画という位置づけだったが、今回のリメイクのように実話であることをわざわざ説明してはいなかった。いくら実話をベースにした作品とはいえ、それをわざわざ説明されると冷めてしまう。しかも、それが、寄りにもよって、「あのシーン」(どのシーンかは本編で確認してください)の後だったのだから、興醒めもよいところである。このことから、映画は無駄に説明的になってはいけないとの想いを強くした。

以上のことからも、リメイクがオリジナルに到底及ばなかったことはお分かりいただけたかと思う。

往年の名作がリメイクされたときにいつも思うのだが、

「リメイクがオリジナルを超えること」はまずないと言っていいのではないか。残酷だが、いつだって、それは真理だと思う。
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