あすとろ

CLIMAX クライマックスのあすとろのレビュー・感想・評価

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)
5.0
音楽は、地獄の底まで鳴り止まない…

廃墟を舞台に大会を控えたダンサー達が練習を終え打ち上げを始める。
振付師お手製のサングリアにはLSDが入っており次第にダンサー達が最高のバッドトリップに堕ちていくストーリー

「お酒」という人間の化けの皮を剥がすアイテムを元に、人間の凶暴性や集団心理、本性などを炙り出していく流れと構図が見事!
監督自身も「お酒を飲めない年齢の子達に酒の怖さを味わってほしい」というもののR-18に指定されるほど過激に容赦なく描いてます。
主演のソフィアブテラも元ダンサーで、ソフィア以外は演技経験0の現役プロダンサー、そんなダンスの知識と愛が溢れてる人達が創り上げたこの一本。
前半のノーカットのダンスシーン、フリースタイルで踊りを見せつけ合うシーン、
これだけでも映画料金の元が取れるほど素晴らしいです!
ギャスパーノエ監督の十八番でもある長回しワンカット撮影がより“ドラッグトリップ”を感じさ、CG無しなのにも関わらず観ている観客にまでLSDの作用を効かせてくる感じはとても凄いです。
映像酔い的な気持ち悪さではなく「グルグル目紛しく回る」という表現がピッタリなほど限界までトリップさせます。

またトリップを後押しするサウンドトラックもギャスパーノエ監督のこだわりポイント。
序盤のほろ酔い気分で楽しさが加速していくところはとことんアップテンポのディスコチューンを鳴り響かせ、確実にLSDでキマったところからはドスの効いたシンセサイザー系の曲が流れ最後の最後にGiorgio MoroderのUtopia(理想郷)という曲を流す皮肉っぷり!
ただタイトルで選曲しただけでなく、徐々に盛り上がって最後はどこか幻想的な高音で終わるところが映画の「盛り上がるところまで盛り上がり現実へ引き戻される」ような構図と一致していて唸ってしまいました笑

そもそも作り手である監督自身が前衛的で万人ウケするような映画を作って来ていないのでハマる人とハマらない人の二極化になると思いますが、「ギャスパーノエ作品気になるけどどこから手を出せばいいだろう…?」や「この作品気になるけどどうなんだろう?」と悩んでる方は是非ご覧いただきたい!
映像と音で画面からぶん殴ってくる“トリップセラピー”是非ご賞味あれ!
めちゃくちゃオススメです!
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