磔刑

ハロウィンの磔刑のレビュー・感想・評価

ハロウィン(2018年製作の映画)
3.2
「ホラー界のポップ・スターの帰還」

マイケル・マイヤーズがハロウィンの街中に降り立つシーンは最高にテンションが上がった。そこからの長回しによるキャラの際立たせ方、ハロウィンというイベントとの対比も最高にクールだ。

オリジナル版から地続きである事を直感的に感じられるオープニングは、絵的な美しさも相まり、掴みとしてはバッチリ👍そこからのタイトルクレジット、そしてあのテーマ曲。オリジナル版の熱狂的なファンではないが、何故だか身震いする感動を覚えた。

近年のホラー映画界は心霊や悪魔をテーマにしたゴシック・ホラー、モダン・ホラーの復権の兆しが強く、一時代を築いたスラッシャー映画の存在感は薄くなっている。しかし、本作はスラッシャー映画の先駆けにして金字塔であるオリジナル版『ハロウィン』の魅力を引き継ぎながらも、現代的アレンジによって時代に適応した新たな魅力を有している。
スラッシャー映画の花形である殺しのバリエーションは多岐にわたり、個人的には防犯ライトのくだりが、最も鑑賞者の恐怖感を引き出すのに成功してると思う。他にもトイレのくだりや、ベビーシッターが襲われる展開もベタ中のベタではあるが、フリの上手さ(画面上の死角や、不用意に視線を逸らすキャラクター)も相まって、ショック・シーンに新鮮味がしっかり生まれている。何も無い所で転んだり、服が引っかかって逃げそびれたりといった、ホラー映画にありがちな陳腐な演出がチラホラ見え、B級から完全に脱しきれてないのには少しがっかりさせられたが。

中盤までの雰囲気、盛り上がりは非常に良かった。だが、後半ローリー家での攻防が主軸になってからは、作品の毛色が明らかに変化して、個人的には微妙だった。マイケルと正面切って戦う女性陣の姿は、往年のホラー映画の定番である叫んで、逃げるだけの無力なヒロインからの脱却。戦う強い女性、フェミニズム精神のメタファーだ。それに対峙するマイケルは、それを抑圧する男性社会の意味合いが強い。
まぁ、メッセージ性に不快感は覚えはしないし、ただ残虐なだけのホラー映画に深みを与えようとする気概は評価できる。しかし、地下室でのやり取り辺りで内心、マイケルを応援してしまってる自分がいて、メッセージ性の部分がホラー映画のエンタメ性に欠陥を生んでいるように思えた。
マイケルの主治医も途中ではっちゃけた割にはストーリー、テーマ双方にそれほど寄与せず、過去の事件がマイケルに与えた影響ってくだりも回収されず、がっかりさせられた。

ホラーの定番を作り出した一作のリメイク兼、正当続編であるため、“ありがち”な印象は確かに払拭は仕切れてない。近年の高クオリティ・ホラー映画達が魅せる“正統進化”またはそれとは真逆の“邪法”。それらとはまた違った観客が安心して楽しめる“ホラーの王道中の王道”作品だ。
秋の夜長に家族や恋人、友人と楽しんで観るには十分過ぎる程のポテンシャルを持った作品である。
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