小松屋たから

さよならくちびるの小松屋たからのレビュー・感想・評価

さよならくちびる(2019年製作の映画)
3.6
小松菜奈、門脇麦、成田凌、というキャスティングはこの規模の映画では(まったく悪意無く)最高の贅沢。特に門脇麦さんはこの界隈のスターですね。いつも安定して素晴らしいパフォーマンス。

この三人が絡むバンドもの、というからには面白くないはずはない。小松、門脇のインディーズデュオ「ハルレオ」の解散ツアーという名目のロードムービーの中で、それぞれのLGBTとしての苦悩、恋愛、家庭・生活環境、過去の失敗を垣間見せていくのだが、三人はやはりかなり心地よく共振していて、彼らが実在するかのように思わせてくれた。スタッフの音楽への信頼、各地のライブハウスへの愛情も感じられた。

ただ、これは、昨今乱立している「既存の名曲や人気グループを元ネタにした映画」ではない、という誠実さの裏返しでもあるのだが、「ハルレオ」としての持ち歌が少ないので、同じ曲を何度も聞かされることになって、ごめんなさい、ちょっとそれには飽きてしまった。もちろん素敵な歌で、二人も、驚くほどよい味わいの声を出しているけれど。

あと、時系列をかなり崩してシーンを並べてきているが、遊び心というか技巧をやや過剰に見せつけられている感じで、第三者の観客の身としては、何か置いてけぼりにされてしまったように思う。ある部分はもっと纏めてみせてくれた方が素直に彼らに感情移入できただろう。

また、三人のうちの二人だけの会話になるところが(色々な組み合わせで)何か所かあるが、二人っきりにするために一人がいなくなる行動の理由に不自然なことが多く、役柄的に本当に気を遣っているように見せている時もあるけれど、作劇上の必要に迫られているとしか思えない個所も散見されて、そこは、脚本の難を感じた。ほぼ三人芝居、という性質上、これもやむを得ないことかもしれないが。

しかし、1、2シーンだけの登場でさらっと傷痕を残して去っていく、松本まりか、松浦祐也、篠原ゆき子って…役者魂を見た。