小松屋たから

おかえり、ブルゴーニュへの小松屋たからのレビュー・感想・評価

おかえり、ブルゴーニュへ(2017年製作の映画)
3.8
父との確執から家を飛び出し音信不通だったブルゴーニュのドメーヌ(ワイン生産者という意味だそうです)の長男が、10年ぶりに帰郷。父と家業を受け継いでいた妹、他家へ婿養子に出ていた末弟と再会する。

旅に出て10年音信不通、というのがヨーロッパの若者らしい放浪譚で、でも家族の絆は深い、というのが羨ましい。この3人兄妹、本当に仲が良いな。そして、有能な生産者だった父親への思いや、今の自分が置かれた環境はそれぞれながらも、3人ともどこにいようが結局ワインとの繋がりは捨てきれないでいるというところが、モノ造りの一家に生まれた家族の業というか、宿命というか、本能を感じさせてくれた。

ワイン生産の一年の作業の様子と並行して、それぞれの人生の悩みや現実的な金銭問題、親戚や近隣、作業スタッフとの確執、交流が描かれていく。

時に感情に任せて突っ走ってしまったり、品行方正ではいられなくなったり、勘違いやすれ違いがあるのが人間。でも何があろうとも自然は揺るぎなく、土地は人を優しく見守っているという信念が物語の根底にあって、それがこの映画全体に安心感をもたらしている。背景となるブドウ畑の四季は本当に美しい。

3人それぞれに、溜まっていた感情をついに炸裂させる場面があって、それが、シリアスだがユーモラスでもあり愛おしかった。

特に大事件が起きるわけでもなく、最終的には上手く行き過ぎるようにも感じるストーリーなので、退屈と感じる向きも多いだろうが、それがいかにも人生を描くに長けたフランス映画らしい。この兄妹には幸せになって欲しいと素直に思える映画だった。