“haunt you（取り憑く）”と云う事。
カール・Th・ドライヤー。
ドライヤーの長編第二作。
彼には珍しく、鑑賞者へユーモアを以て箴言を与えてくれる寓話である。

寓話をだらだらと語るのも不粋かと思われる為、本作のレビューは行わない。
ただ一点挙げるとすれば、蹄鉄と亜麻仁油が二人に与える物─。
それが本作を理解するヒントになろうかと思われる。
一見単純なコメディの様でいて、その実中々に味わい深い作品である。

やはり照明がめちゃくちゃ良いんだけど、コメディチックな話とは相容れない感…。牧師が主役なので展開より、独身男たちの円環や葬儀など儀式的な身振りだけが妙に印象に残る。あとこの頃からドライヤーは老害を登場させてるね(こちらは母性に落ち着くのだが)。ラストも啓蒙的な十字形フェードアウトで終わる。

許嫁がおりながら牧師にならんと結婚を許されないニキが苦労の甲斐あって（と言うか他の候補者を蹴落として）ようやく牧師になり遂に結婚しようとするが牧師たるもの前任者の未亡人があればこれを娶らなければいけないとの謎の規定があり牧師の地位を取るかババアとの結婚を取るかで迷うまでもなくどうやら黒魔術に長けている（？）らしいババアの策略にハマり（と本人は思い込んでいるが単純に酒の勢いで）ババアと結婚する羽目になる話。恋人を妹とうそぶき館に連れ込みどうせババアだからさっさと死ぬやろとその日を待つがババアはどうやら不老不死の薬すら持っており…と言う村の噂に惑わされなんとかババアを追い出そうと画策するも流石にババアは全てにおいて一枚上手であり余裕でかわされていく。ババアが2階に上がった隙に梯子を外し束の間のイチャコラタイムを楽しもうと思ったら2階にいた恋人が凄い高さから落下し大腿骨骨折（！）の重傷を負う、そんな恋人を甲斐甲斐しく世話してくれるババアの母性に触れ、牧師の思いも少しずつ変化していく。敢えてテーマを挙げれば利己では無く利他的に生きていく人生の尊さと言ったところか、ババアも嫌な描かれ方をし続けるが彼女は彼女なりに亡き夫との生活が染み込んだ空間への愛着を持っているだけであり、決して魔女ではない。8歳児が書いた『吸血鬼ノスフェラトゥ』みたいな悪魔の着ぐるみ来てビビらそうとするシーンは確かにコメディ、十字と共に亡き夫と共に天に向かう様にフェードアウトしていくラストは感動的ですらある。