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mid90s ミッドナインティーズのytのレビュー・感想・評価

3.9
A24が配給した、ジョナ・ヒルの長編映画監督デビュー作品。1990年代のロサンゼルスで描かれる、1人の少年の成長と葛藤を映した青春ジュブナイル映画。大人になることへの憧れ、仲間内の嫉妬、自分の居場所を探し求める……。誰もが1度は子どもの頃に思う心情をリアルに描ききった一作。

[レビュー]
・主人公スティーヴィーの”早く大人になりたい”と願う成長と葛藤を、友情を織り交ぜて繊細に描いた素晴らしい作品だった。スケーター仲間に出会うきっかけは、兄への憧れと敵わない自分に対する不甲斐なさ。当初は本当に彼らとつるんで良いのか、と観ている側は思ったが結果的には正解だったのだろう。

主人公は彼らとつるむことで酒、タバコ、ドラッグなど履き違えた”大人”への成長をしていく。しかしそれが主人公にとっては大事な成長の過程であり、何よりも居場所を提示してくれている表れだった。彼らは街や主人公の親から卑下されているが、本当の悪ではない。根底には友情が存在していて、一緒に過ごすことによって青春の1ページを刻んでいる。やがて彼らが本当の大人となり、当時の記憶が蘇った時、真の思い出となるのだろうと思うとエモい。

・主人公の心情を鮮明に描く一方で、他の仲間の心情も緻密に描いている。自身の夢を追い求め仲間内での立場を気にする者、夢を追う友達を見て自分の気持ちに嘘をつき背伸びをする者、仲間内で他人がちやほやされ嫉妬する者。どれもまだ心は子どもな彼らの心情をリアルに映し出していて、本当に良く出来た作品だと感じた。

・また本作は、仲間の一人”レイ”の存在が主人公にとって良い影響を与えている。レイは唯一彼らの中でも自身にとって必要なことと必要でないことの線引きをハッキリとすることが出来ているので、主人公にも良い助言を多くする。憧れや成長を追い求めてスケートボードに乗り続けた主人公には中々響かないが、大人になった時レイの言葉の意味を知るだろう。

・ラストシーン、本作がなぜ4×3の画面でストーリーが進んでいたかが明らかとなる。正直ラストへの帰結はどのような形なのか中盤から気になってはいたが、面白い終わり方だったかな。

・主人公スティーヴィーは13歳設定のはずだが、見た目がちょっと若すぎるというかかわいすぎるというか。そこが仲間内でつるむシーンは妙に背伸びしまくってる感が出て、ちょっと惜しかったかな。他のキャストでも良かったかも。

👉誰もが思い描く”早く大人になりたい”という感情を、1人の少年の葛藤に乗せて描いた本作。兄弟がいる人、友達が多い人などにはとにかく観て欲しい一作。
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