あすとろ

mid90s ミッドナインティーズのあすとろのレビュー・感想・評価

4.0
たちあがれ、何度でも。
走り続けろ、自分だけの世界まで。

1990年代半ばのロサンゼルス、母と兄と3人暮らしのスティーヴィーは日常的に兄から暴力を受けていた。
兄に全く歯が立たないスティーヴィーはある日訪れたスケートボードショップに入り浸る年齢の近い少年達と出会う、自由で大人な世界を教えてくれる彼らに憧れスティーヴィーもスケボーを始め彼らに少しでも近付こうと奮闘するストーリー

85分とあっさりした上映時間ながら2時間映画を観た後のような満足感と清々しく、そして鋭く胸に刺さる素晴らしい作品でした…
メインのスケボーグループの全員がスケートボーダーで殆どが長編デビュー作という面子ながら全く演技未経験を感じさせないほど見事な出来栄えで何度も涙が溢れそうでした。
演技ではあるものの絶妙な表情と漂わせるティーンならではな空気感が誰しもが味わった事のあるエモーショナルな環境を生み出していてこれは他の映画では中々真似できないような作品に感じました。
自分自身、別にスケボー経験者でもなく物心ついた時には2000年代だったような男ですが何故か劇中のスティーヴィーには共感できるような、自分自身を投影できる人物像で、興味を持ったものを受動的にディグり始める姿がめちゃくちゃ共感できて「確かにこんな感じで好きな物を漁ってたなぁ…」とか「背伸びして痛い思いしたな」とか産まれた時代や文化などまるっと違くても何故か自分に置き換えて観れる数少ない作品だと感じました!

また劇中で流れるサントラが見事で『90s版WAVES』のような当時のヒップホップ曲が最高に合うんですよ…
この現代、世界中で毎日新しい音楽が生まれてますが今新しく当時の曲を聴いてもめっちゃカッコいいんですよ、そう感じれるんです。
歌詞の意味とか、アーティストの情報も曖昧でもしっかり場面の空気感に華を添えてくれつつ音楽自体の魅力を感じれる使い方は良かったです。
シンプルに音楽自体がカッコいいのでSpotifyやApple Musicなどで公開されてるプレイリストを聴いてお気に入りの曲を見つけておいて本作を観に行く、という楽しみ方もオススメです!

ジョナ・ヒルの監督&脚本デビュー作とは思えないほどの面白さとエモさ、そしてラストシーンの演出はウルッと来つつ微笑ましいスッキリとしたラストでした!
全国で約30館程しか上映してませんが確実に上映拡大する事間違い無しの傑作なので、足を運べば観れるような距離に上映劇場がある方はぜひともご覧頂きたい!
「青春映画のマスターピース」の肩書きに恥じない大傑作、是非ご覧あれ!
めちゃくちゃオススメです!
あすとろ

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