馮美梅

7月22日の馮美梅のレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
3.8
2011年ノルウェーで起きた政府庁舎前での爆破、そしてその後のウトヤ島での大量虐殺事件を犯人の行動と、ウトヤ島でのサマーキャンプに参加して、重傷を負う男子高校生が最後、裁判で対峙するまでの物語。

映画「ウトヤ島、7月22日を見る予習にと思ってみたけれど、1人の人間がいともたやすく、大人たちをだまし、そして自分の主義にそぐわないと思う未来ある若者たちを殺していく。

殺戮のシーンはそんな長くはないけれど、自分だったらどうするだろうとか思いながらみんな助かってぇ~と思いながら観ていました。

主人公の男子高校生は弟とキャンプに参加。弟は何とか助かったけれど、自分は5発も弾丸を受け瀕死の状態。生きているけれど、その代償もはなり知れない。取り除くことのできない脳の銃弾の破片でいつ死ぬかわからない恐怖、見えなくなった片目、ろくに歩けない、腕も思うように動かない、しかしそれ以上に、その時の犯人と友人達、そして撃たれた自分の精神的トラウマも想像以上の苦しみ。

犯人は人権派の弁護士を頼み(いい迷惑だよね弁護士も)法廷で自分の主義主張を言いたい放題。死刑も終身刑もないノルウェーでの裁判は本当に、被害にあった家族たちにとって苦しいことばかり。

最後は証人尋問として生き残った生徒たちが証人となり法廷に出て欲しいと言われる。その1人がビリヤル。一時は自暴自棄で死のうとまで考えたけれど、犯人と対峙するために、とにかくリハビリを頑張って、杖なしで歩けるようにまで回復させる。その姿を見せることが犯人にダメージを与えることができると。

事件自体、当時日本ではあまりというかほとんど報道されてないような気がする。実際、私は覚えてないというか知らなかった。こんなに大量に罪のない人たちを殺したにもかかわらず、ノルウェーの司法では長くて21年ぐらいで出所してくるということ。死刑がいいとか悪いとかではないけれど、被害にあった人たちは心休まることなんてない。

出所してきてもヘタするとまた同じことをする可能性もあるわけで、実際、収監されている現在でも色々やりたい放題だったりするみたいで、本当にやり切れないだろう。

でもこの作品でも島のシーンは20分くらいだったのにかなりダメージがあるのに映画「ウトヤ、7月22日」はどうなるだろう?でも、こういう物語を知らない人たちにとっては観ておくべきものかもしれない。
馮美梅

馮美梅