Ricola

ROMA/ローマのRicolaのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.8
久しぶりに衝撃的な映画を観た。

余韻が波のように終わってからずっと押し寄せてくる。

圧倒的表現力と力強さに圧迫されて、息苦しい。

1970年代のメキシコの裕福な家庭の家政婦の目線で描かれる映画。

Netflix配信だが、映画館の大きなスクリーンで観るべき映画だと思う。
なぜなら映画館の方がこの世界に呑み込まれながら臨場感を味わえるからだ。

事件はたくさん起こるけれど、ずっと平常運転な雰囲気。
そのおかげでストレートに心に響く。

※以下ネタバレ注意⚠※






















この映画で描かれていたテーマは、
女性の強さ
自然・生命への畏怖
ではないだろうか。

主人公の家政婦の女性とその彼女が働く家の妻。

家政婦は身ごもるが、相手の男性から捨てられる。
彼の元へ行って妊娠していることを伝えても、「召使いのくせに」とだけ言われ彼女の元を去る。

主人である女性の夫も愛人の元へ行ってしまい、彼女と子供たち4人を捨てるのである。

男に捨てられても、彼女たちはなんとか日常を取り戻していくのである。

印象的なのが、主人公が感情を表に出す瞬間である。
それまでも彼女の感情はよく表されていたが、それは彼女の表情に頼るものではなかった。

何かがプツンと切れたように吐き出した感情には、子供を失ったときの自分の気持ちへの罪悪感ややるせなさがこもっていたはずだ。しかしそこで吐き出したおかげで彼女は前に進めたのだろう。


そして生命・自然への畏怖。

山火事や地震にあったり、テロに巻き込まれたり、死産を経験するなどこの作品では生命・自然の偉大さと恐ろしさを見せるシーンが多い。

例えば山火事の中、必死に火を消そうともがく人々を背景にミノのようなものを身にまとった男が歌を歌うシーンがある。
この男が何を歌っているかはわからないが、所詮人間は自然には太刀打ちできないということをその一場面だけで表しているようだった。

主人公がお産を迎えるシーンでずっと定点カメラで映しているのもよかった。
産声を上げない子供が医師の手に渡り、主人公がチラチラそちらを見ていた。

あとは終盤の海で子供が溺れてしまっているシーン。
かなりやばいことが起こっているのに、淡々と映す長回しが逆に効いている。
波が容赦なく押し寄せ、なかなか陸へ上がれない。
助かるのかわからないハラハラ感がそのカメラワークのおかげで常につきまとう。


あと冒頭のシーンとラストシーンが同じものを映しているのが好きだった。
色々起こる前と同じように見えるけれど、実は同じではない日常がこれから待っているという予感をさせるものだった。

悲しみも怒りもすべて優しさで包み込む映画だった。
Ricola

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