にくそん

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のにくそんのレビュー・感想・評価

4.2
美しい映画だった。何が美しいってキャストは美形ぞろいだし、衣装、建物、音楽、セリフ、そして画面全体、映像そのもの。買い手(読者)のせいにしてやたら堂々と女性を差別する編集者に会う出版社さえ内装が爆イケで、冒頭からわくわくした。フィルムで撮ったんだっけ、雰囲気あるなあ!

色とりどりの装いで雪原を行くマーチ家の面々とか、海辺のジョーとベスとか、もっとなんでもない、緑の濃い季節に走る二頭立ての馬車の黒褐色の毛並みとか、もう色の設計から何から手抜かりがなくて、あのカットもこのカットもアーティスティック。製本のシーンも感動する。

ジョーのお洋服がツボにはまりそうだなっていうのは観る前から分かってたけど、本当にジョーは今年観た映画の私が贈るベストドレッサー賞だし、ジョーに限らず、みんな衣装がいい。例えば草原に立っているローリーの白シャツの袖が膨らんだ形をしていて、それがバカに似合っていて綺麗。四姉妹も服の色とキャラがよく合ってる。

それと、キャラクターの心映えが美しい。メグの結婚を前に「少女時代が終わっちゃう」って寂しがって泣くジョーが、その後も余裕で少女しててきゅんきゅんする。四姉妹(にローリーを加えたり、ママを加えたり)がきゃっきゃするシーンが何回もあるんだけど、どのシーンも微笑ましくて、もはや泣けてくる。

女性の生き方の幅がものすごく狭められていた時代に(今だって狭いけど)どう生きていくんだっていうテーマに対して、思い切り格闘するジョーの選択だけが正しいようには描かないで、女にはいろんな戦い方があるんだと腑に落ちる描き方をしてくれていて、そこもすごく好ましかった。お母さんと叔母さんが話すシーンとか、短いけど面白い。

従軍中のお父さんからの手紙は、このコロナ禍の非常時にみんなへ届いた手紙のようだった。別にだからっていうんじゃないけど、この映画、たくさん観られてほしいなあ。
にくそん

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