しめじろー

ディリリとパリの時間旅行のしめじろーのレビュー・感想・評価

ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)
3.4
舞台は19世紀末〜20世紀初頭、新しい文化や芸術が台頭し、最も繁栄したと言われる時代のパリ。南の国の少女ディリリとパリの青年オレルが、当時を代表する多くの芸術家たちと出会いながら、連続少女誘拐事件の犯人と目される悪の秘密結社「男性支配団」を追う大冒険譚です。タイトルの「時間旅行」というのはあくまで観客にとっての話で、タイムスリップ物ではありません。
ロダン、ピカソ、モネ、ロートレック…映画に登場する偉人は100人を超えます。この面々が同じ時代を生きたってすごいな。『ミッドナイト・イン・パリ』級に教養が試される映画でした。しかしルソーの背後にはきちんとルソーの作品が飾られていたりと、主要人物は自身の作品とともに登場してくれるので、わりと親切設計なのでした。

途中までは完全に子供向け映画です。味方と敵が単純ではっきりしてるし、悪い奴は登場シーンからずっと悪い。歴史上の偉人もたくさん出てきて教養にもいい。まさにディリリと同じくらいの年齢の子供に向けられた作品なのかなという印象でした。なので中盤、ワルモノである「男性支配団」とやらの目的とその手段が判明した瞬間、そのあまりの非道さに固まりました。うわわわ…。改心とか無理だろうと一瞬で悟らせるほどの差別主義。もはや宗教です。こんなヘビーな奴らをぶっ込んでくるとは思いませんでした。「軌道が交わらない星もあるのよ」。軽い気持ちで見ると火傷します。しかしガチでこういう思想の人もいたんだろうなあ…。
そんなわけで、「ベル・エポック」と呼ばれる華やかな時代のパリ、その光と闇を強烈に見せられるような作品でした。しかし物語のメッセージは圧倒的に光寄り。君の未来は希望に満ちているんだよ、何にだってなれるんだよ、世界は君の味方だよと、幼い娘に伝えているかのような映画でした。

写真ベースの背景に、ポスターカラーで塗ったかのようなのっぺりとしたCGキャラクター。この特徴的な画風、慣れるまですごい違和感でしたが、ときどきハッとするほど美しいカットがありました。絵画が好きな人にはおすすめです。