mimitakoyaki

Girl/ガールのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

Girl/ガール(2018年製作の映画)
4.1
映画館で見逃した作品。
バレエダンサーのトランスジェンダーの少女の話というくらいの情報しか知らずに見ましたが、トランスジェンダーならではの苦悩と普遍的な思春期の葛藤がとても繊細に描かれていました。

主人公のララは15歳の女の子ですが、体はまだ男の子のまま。
ホルモン治療やセラピーを受けつつ、性転換手術を望んでいます。
名門のバレエ学校に入りましたが、周りはエリートばかりなので、毎日一生懸命練習する努力家です。

そんな彼女の日常が淡々とドキュメンタリーの様な感じで映し出されていますが、家族のちょっとした言動や、時に学校で差別されて傷ついたり、わざわざ家族に負担かけてこの学校に入るために引っ越してきたということもあり、バレエで良い成績をとらないとという焦りがあったり、一番大きい悩みは周りの女の子のような体ではなく、胸はぺたんこだし男性器がある事をいつも突きつけられる事。

いろんなひとつひとつが彼女を追い詰め、どんどん焦っていくしどうしようもなくて、お父さんはすごく理解してくれる良い人ですが、このあまりに複雑にこんがらがった心の中を打ち明けることができなくて(親にだからこそ言えない)、そんなもがき苦しみが痛々しくて、家族やお医者さんは親身なのに、心を開けずに孤立するララの辛さが悲しかったです。

わたしはトランスジェンダーではないけど、思春期は自意識が肥大化して、やたらと周りの目が気になったり、良く見せたかったり、だから可愛い子の顔や体つきを羨ましく思って、コンプレックスを感じたりもしました。

作品中でも、身体、特に男性器へのフォーカスはかなり意識的に撮られているのは感じましたが、身体のことや性のこと、異性への意識が高まる年頃なので、その内面を強調してるんだろうと思って違和感は特には感じませんでしたが、トランスジェンダーの立場からはシスジェンダーの視点で撮られているという批判があったと後で知りました。

確かに興味本位でトランスジェンダーの身体は見られがちだと思います。
シスジェンダーにはわからない部分での屈辱感とか尊厳が傷つくような事も当事者にはあるのかも知れません。

また、この作品でララを演じた俳優がシスジェンダーだったことからも批判があったとの事です。
でも、例えば有名な作品だと、「リリーのすべて」でトランス女性を演じたエディ・レッドメインにもそういう批判があったのでしょうか?
日本でも「彼らが本気で編むときは」でトランス女性を演じた生田斗真はシスジェンダーだと思います。

トランスジェンダーではない人がトランスジェンダーを演じる事への批判は、まだ不勉強なのでその問題点があまりわかりませんが、当事者でない者にはわかりにくい事は確かにたくさんあると思うので、当事者はもちろん、いろんな立場からの意見をたくさん聞いてみたいと思いました。

わたし自身は、この作品から、トランスジェンダーが抱える苦悩の大きさをとても感じたし知ることができたので、とても良かったと思いました。
しかし、いろんな批判もあるので、様々な議論をしながら、マイノリティへの理解が深まっていくと良いなと思いました。

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