新潟の映画野郎らりほう

グリーンブックの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.4
【王の帰還】


ドンシャーリー(アリ)初登場時の装いは さながら王である。
王は後部座席に座る、王だから。王の席は後部座席であり、後部座席座りし者が王である。

彼に帯同するトニー(モーテンセン)の一線級戦士の攻撃力。
各地を巡る二人に 度々挿込まれる旅の軌跡標す地図は もろにドラクエ。

ロードムービーに非ず、志向せしは「団欒の“環”への帰還目指すLoadムービー」か。
「他種族との戦い」「異物/他者を徹底的に殲滅して万々歳」ゆう薄ら寒い主題系も「指環某」との共通項だ。

但し、他者の痛みに鈍感で 加虐当事者意識希薄であった「指環」に比べ、本作は被虐側に寄り添う。
それは結構だが 問題は、それに伴う“加虐者意識の所在”だろう。そこに戒飭はあるのかと。
嘗て徹底加虐を讚美しておきながら、今 掌反す様に被虐の訴えに足並み揃える。単なる時流への盲目従属にしか見えんが。
せっかく同じ物語構造で諷喩しているんだ。時流に疑符を持ち、時流を自身の思考と錯覚するな。自分自身こそを疑い恐れるべきだろう。


作品のワカリヤスイ主張に直截教唆されて終いでは、ハイソな白人コミューン共の賢しらな理解/自覚性と何ら変わるまい。




《劇場観賞》