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グリーンブックのymdのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.8
シリアスな背景をバックにポップで軽快に進むロードムービー。オスカーを獲ったことで日本でも非常に話題になった記憶があるけどようやく鑑賞。率直にとても良い映画だと思う。

『ムーンライト』で忘れ難い名演技を見せたマハーシャラ・アリと『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役でも有名なヴィゴ・モーテンセンという名優2人が車内で繰り広げる会話劇はクスっと笑えるが、当時の差別社会、階級社会の暗さが影を落としている。ケンタッキーフライドチキンのくだりなんかも、フライドチキンというもののルーツを踏まえて観るとなかなかのブラックジョークである。

互いに社会的な立場に問題を抱える2人が長旅の中で徐々に理解を深めて友情を育んでいく、というシンプルで普遍的な物語だけど、極めてセンシティブな題材を扱っているがためにただの友情譚としては認められないのが皮肉な現実ではある。

オスカーを獲ったことに対する批判を浴びるのは理解はできる。『ブラック・クランズマン』と比較すべきではないが、おそらくはスパイク・リーの主張は真っ当であるとも思う。でもこの手の話っていうのはとても根が深く複雑な問題なので、自分にはどこか想像が及ばないし、そんな目くじら立てて批判しなくたっていいじゃん、と思ったりもするのである。

もっと根源的に“2人の男によるバディムービー”として楽しめるだけで十分っていうか。映画としてはとてもスムーズでまとまりのある綺麗な作りなので、いい映画見たな、という感想だけあればいいと思うのである。
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