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いろとりどりの親子のろのレビュー・感想・評価

いろとりどりの親子(2018年製作の映画)
5.0


「ありのままの自分を受け入れないことは、自分自身に対する最大の暴力だ」


みなさんは「鬱」という漢字の意味を知っていますか。
「鬱病」「憂鬱」・・・マイナスのイメージが強いこの漢字の本来の意味は「さかんなさま」。生命力溢れる木々が生い茂る、という意味なのだそうです。そういえば、鬱病になる人はもともと意欲的でポジティブな人が多いですよね。
そんな鬱病含め精神病を理解してもらうのは、とても難しい。

わたしの父も祖母も、もともと誰か(社会)に植え付けられた偏見や固定観念があって(みんなあるよね)、それと向き合うことがなかなかできない。きっと、父なりに祖母なりに精一杯なんだ。だけど、ときどきすごく寂しくなります。たぶん亡くなった叔父も同じように感じていたんじゃないかな。
だから昨年はずっと『ぼくと魔法の言葉たち』のオーウェンが羨ましかった。
自閉症のオーウェンとコミュニケーションをとるために彼のお父さんがしたこと。それは、ディズニーキャラクターになりきって話しかけること・・・。
(わたしがどれだけ話しても働きかけても、わたしの父は理解してくれない。オーウェンはあんなふうに寄り添ってもらえるなんて羨ましいな。)悔しいやらもどかしいやら、複雑でした。

「愛と受容は同じじゃない」 そう語るのは、「いろとりどりの親子(FAR FROM THE TREE)」の著者・アンドリューさん。
ゲイであることを受け入れてもらえなかったのだから、自分は両親に愛されていないんだと感じていた彼。しかしたくさんの親子を通して、「完璧に受け入れること(理解すること)ができなくても愛している」という親の気持ちがわかったと言います。
もうこの言葉にどれだけ救われたことか。
「ああ、そうか。そうなんだなぁ。」と頷きながら気持ちがどんどん溢れます。
また、罪を犯した息子をもつお母さんは「愛そうとしなくても愛さずにはいられない。愛情が湧き上がってくるの。」と涙ながらに。
頭で考えるより、もっとずっと深いんだなぁ、愛は。


「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」拳を重ねる仲良し三人組。
「体が不自由だからって、精神的にも自由じゃないって思われるんだよ。俺は悩みなんて一つもないのに。」笑う哲学者。
「症状を改善するなんて。わたしはわたしよ、いまのわたしがいいの。」胸を張る女性。
結婚式のスピーチ、息子に贈る父のことば。

スクリーンを見つめながら、このあたたかさに、はじめからおわりまで涙が止まりません。



「幸せの形は無限にある」










( ..)φ

12月5日、病院に通い始めてちょうど3年が経ちました。

この1年の成長はほんとうにすごい。
昨年の今頃なんか「またことしも生き延びた。また1ヶ月生きてしまった」ばかり口にしていたし、そもそも話すこと自体かなり困難でした。単語・ことばが思い出せない、話し始めても自分が言いたいことをうまく文章にできない。何か言うたびに「ちがうんだよ、これが言いたいんじゃないんだよ」と怒りながら訂正する。そのもどかしさといったらもう。
だからね、コミュニケーションがうまくいかなくて癇癪をおこす自閉症のジャックくんの気持ちが、もう痛いほど分かる。

そして今年はやっと、ひとりで病院にいくことができるようになりました。
まえは 病院=絞首台 みたいな感覚で、はっきり言って恐怖しかありませんでした。
いまでもちょっと怖いから「リュミエール!」のパンフレットと「第三の男」のテーマソング(ハリーライムのテーマ)をおともに通っています。
ただ通えるようになったといっても、めちゃくちゃ疲れる。
あした病院に行こうって決めると、翌朝はウツのときみたいな重だるさ。体を引きずるようにして病院へ向かいます。

それでも、3年前病院に行く決心ができて、ほんとうによかったと思ってる。
一度失った(分からなくなった)「うれしい」の気持ちをまた味わえるようになった、これが今年一番の前進です。
ろ