きよぼん

劇場版『えいがのおそ松さん』のきよぼんのレビュー・感想・評価

5.0
裏切られるんじゃないか?と不安に思ってたんです。いや。真面目な話、本気でドキドキしてたんですが、その心配は全くの杞憂でした。

高校の同窓会に参加した、六つ子のおそ松さん。前途洋々の同級生をみて、いまだニートの6人は落ち込みます。目が覚めると、卒業式の前日にタイムスリップ。6人は高校時代に抱えていた悩みを思い出し…というストーリー。

日常系の物語が映画になると、非日常をみせるというのが、ひとつのパターンとしてあります。

わかりやすいのが「どらえもん」です。テレビではヘタレなのび太が映画ではヒーローになり、乱暴者のジャイアンが男気を見せる。子供だった日常から、一歩成長しようとする姿が描かれます。

じゃあ「おそ松さん」の場合はどうなるのか。ダメダメな6人が「このままじゃいけないんだ!」と成長するところなんか…みたくないんじゃあああああ!!と思っていたんですね。

なぜなら「おそ松さん」6人が大好きだからです。

ニートだ童貞だと言われても、彼らのことを本気でバカにしてみてるファンなんていません。むしろ楽しそうにしている彼らや仲間を、うらやましい…という気持ちでみてるんです。

そんなある種の憧れである彼らに、映画でありがちな成長物語を当てはめ、自分たちのこれまでの人生を否定するような展開は、本当にやめて欲しいと切に切に思ってたんです。

ところがこれが…いつもの「おそ松さん」なんですよ!

映画は一本筋が通った物語が展開されます。しかしそこで起こるトラブルは、ギャグ全開で乗り切る。かっこいいところはみせてくれない。これは「大人に対する現状肯定」の物語なんです。

実はたいした大人にならなくても、人生は楽しい。この映画は過去の高校時代を通して若い世代に、現在の彼らの姿を通して大人に語りかけます。そして、そんな気づきを周りに感じさせてくれる6人は、やっぱり愛すべき存在なんです。

日常ギャグとして、映画として大変な秀作。全世代に向けたメッセージがある映画でしょう。これはすごい映画。シェー!
きよぼん

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