きよぼん

ジョーカーのきよぼんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.8
観た人の心の負の感情を加速させる映画。最近、元気ないなーと感じる人は観ない方がいいです。この映画観るなら「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」みたほうが心の健康にはいい。いやマジで。

アーサー(ホアキン・フェニックス)は社会の片隅で生き、何もかもうまくいかない。周りの人間からは遠ざけられる。すがっていた夢もふみにじられてしまう。そのヒリヒリと訴えてくる心情にそりゃあジョーカーになるわ、許す!と共感して一緒にダークサイドに落ちてしまいます。

救いがないのは、あまり極悪人が出てこないんですよ。生活の中にある人間関係のちょっとした無視とか、無関心とか、調子に乗ってることがアーサーを追い込んでしまう

終盤のある人物との口論。アーサーの問い掛けに、その人物は答えをはぐらかす。そして…となるのですが、自分はあのシーンにカタルシスを感じてしまいました。あの人物にはそれほど深い悪意はない。でもそれが人の大事な部分を踏みつけた。そしてそれに気がついてもいない。

被害者であるアーサーに感情移入してみてましたが、映画を見終わった後では実は自分もあのように人に当たってることあるよなー、と加害者であることに気がつくだけにドーンと落ち込みました。

映像作品としても一級品の出来映えの映画。といっても、難解で理解しがたいというわけではなく、むしろ自然にするすると頭の中に入ってくるわかりやすい作品です。でも過剰な説明はしていないのがポイントだと思うのです。言葉による説明は少ない。

観た人は言葉で表せないだけで、心には何かしら残る。感情から悪への共感を許すようになってしまう。これが映画の魅力であり、映像の怖さなんですよね。

世の中の厳しい状況があるなかで、人はどこか「ジョーカーがでてきてくれないかな」と思ってないか。その気持ちを膨らませる映画になってることは間違いない。

悪者が正義の味方に倒されることに満足できていた幸せな時代はとうに過ぎ去って、この映画に共感できてしまうのはやっぱり時代かなー、と感じます。

逆にいえばこれだけ人が悪に共感してしまう時代だからこそ、これから出てくる映画は「正義」が「悪」をぶっ倒す映画がでてこなきゃいけない。いや「正義」じゃなくて「希望」かな
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