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ジョーカーのKKMXのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.7
体調がイマイチなときに鑑賞したところ、鑑賞後に体調が大幅に悪化し、仕事を休むハメになったいわくつきのガーエー。まさにジョーカーの呪いだ…

そんな状態で観たからか、本作の感想はまおも(©︎マリさん🏄‍♀️)。

嫌いではないもののそこまでハマらず。体調良ければもう少し印象違ったかも。観応えは間違いなくありましたし。


感想としては、とにかくアーサーが可哀想でした。不器用で冴えない感じですが、優しいしお母さん大事にしてるし、結構ナイスガイだと思いました。あの感じで可愛げがぜんぜんない人って結構いると思うのですが、アーサーはどことなく雰囲気が柔らかく可愛げがあります。職場にいたらたぶん飲みに誘うでしょうね〜。
そんなアーサーが尊厳を蹂躙されまくるから可哀想で可哀想で…ホント可哀相でした。

本作は孤立とか尊厳を傷つけられることへの怒りがテーマになっているのかな、と感じました。
アーサーの立場にそのまま当てはまる人は少ないかもしれませんが、いつああなってもおかしくないと思わせるリアルさがあったと思いますし、そんな風に感じさせる時代に生きているんだな、とも思いました。10年前ならば、ロスジェネに受けるだけのエグみの強いカルト作と評価されていたしれません。普遍的な内容ながらも、モロに時代を捉えていると感じました。だからこれだけ受けているのだと思います。
隣人のシングルマザーとの思い出がフラッシュバックして現実が見える瞬間や、ジョーカー化したアーサーがトークショーで魂の叫びをブチかます場面はかなりグッと来ました。


なので本来好みなはずなんですが、細かいところが微妙に雑で気になってしまった。上流階級や行政側の描き方が画一的で、そこはリアルさに欠けるように思えました。ワーカーの態度が対人支援職とは思えないほど適当とか、市長候補のウェイン氏がリスク管理しなさすぎとか、アーサーの話が丁寧なぶん、微妙に違和感がありました。
あと、アーサーがジョーカー化する引き金が納得いかなかった。母親との関係に仕掛けを持ってくるのはそれまでの母子関係の描写から説得力に欠けるし、そもそも悲しい。あんなにあたたかい親子だったのに…お母さんが可哀相でした。
この雑な感じは文芸っぽいハリウッド作品にてしばしば出会います。傑作『スリービルボード』ですら警官の暴行にお咎めナシとかありましたし。せっかく良いのに、この手の雑さを感じると醒めてしまう。

あと、妄想オチとも取れそうな描き方も、腰が座ってないというかガチ度の薄さを感じてしまった。ヤスミン師匠ならば多様な解釈オチでも、本気度はビンビンに伝わります。たぶん、本作には変革を目指す気持ちがそこまで込められてないのでしょう。尊厳を蹂躙する世界への告発は伝わりますが、それ以上は伝わってこなかった。それはそれでいいのでしょうが、そのアティテュードが個人的にはあまり好みではなかったです。


ホアキン兄貴の演技も体づくりも凄すぎで、流石に圧倒されました。ダンスも謎の説得力があったし、本当に鬼才だ。個人的にはもう少しクズゴミクソな裕也感が欲しかったけど、本作でそれを求めるのは酷ですね。

雑さは認められるものの、ヴィンテージ感漂う画作りやBGMもお洒落で、ブレイクするのも理解できるガーエーだと思います。
しかし、体調の悪いときに鑑賞するとジョーカーの呪いにかかるので注意!今週はそれで棒に振ってしまった…超楽しみにしていたフェリーニの81/2観れなかったのも、ダルデンヌ兄弟特集鑑賞を来週に順延せざるを得なかったのも、全部ジョーカーの呪い!

せめて我々は互いに尊厳を大事にしつつ思い遣って呪いを防いでいければいいなぁと思いました。



【おまけ】
ゲイリー・グリッターさんの『ロックンロールパート2』が劇伴に使われていたのにはビビった。しかも結構いい所で。グリッターさんはロリコン犯罪者であり(胸糞悪くなるレベル)、死ぬまでブタ箱で過ごす一線を超えた人なので、グリッターさんナンバーを耳にするといろいろザワつきます。しかも、ロックンロールパート2は歌詞が『ヘイ!』しかないので、つい失笑しまう。他の曲じゃダメだったのだろうか。ググったら案の定批判されていました🤣
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