kuu

靴ひものkuuのレビュー・感想・評価

靴ひも(2018年製作の映画)
3.6
『靴ひも』
原題 Laces.
映倫区分 G
製作年 2018年。上映時間 103分。
約30年ぶりに一緒に暮らすことになった、家族を捨てた父と発達障害のある息子が、本当の親子関係を築くまでを笑いと涙を交えて描いたイスラエル製作の人間ドラマ。
イスラエル・アカデミー賞で8部門にノミネートされ、父親役のドブ・グリックマンが助演男優賞を受賞した。

母の急死により、残された発達障害のある50歳の息子。
かつて家を出て行った父親が呼び出され、約30年ぶりに親子2人での生活がスタートする。
生活習慣へのこだわりが強い息子に、父はどう接したらよいか戸惑いながらも2人は徐々に打ち解けていく。
そんな中、父が末期の腎不全と診断され、人工透析が必要となる。
特別給付金申請の面接の場で、特別な支援が必要であるとアピールするため、息子が靴ひもを結べないふりをする。

近年、イスラエルでは障害者に対する意識が高まってて、それはエンタ業界にも反映されているそうです。
イスラエルね映画やテレビシリーズでは、自閉症や知的障害のある人々が、解決すべき問題や同情を誘うためだけの存在ではなく、一人前のキャラとして描かれている作品が増えてきたとか。
ヤコブ・ゴールドワッサー監督の魅力的コメディ/ドラマの今作品は、特別な支援を必要とする人物を主人公とするイスラエル映画のリストに加わることになる。
特別な支援を必要とする息子を持つ父親でもあるゴールドワッサー監督は、障害者に対する社会の態度について、簡単には答えの出ない深刻な問題を提起する感動的な映画を作り上げてました。
また、今作品は、これまで何度も見てきたようなストーリーの映画になりそうな気はしたが、うまく回避していたかな。
母親を突然亡くした悲しみに打ちひしがれている発達障害を持つ30半ばのガディ。
母親が彼を庇い支えてくれなくなった恐ろしい新世界にも対処しなければならない。
どうやら母親は、彼を育て、どんな癖があってもありのままの彼を受け入れてくれたよう。
ガディは今でも、いろんな食べ物が触れた皿を出されると動揺し、足のマッサージを受けなければ眠れない困ったチャン。
父のルーヴェンはガレージの中では主導権を握っているが、外に出ると何もする気力がなく、ましてやガディのように助けが必要な人の世話をする気力もない。
太りすぎでヘビースモーカーのルーヴェンは、誰もが知っているカフェにいるのが唯一の家族のようなもので、そのカフェは彼の友人の娘リタ(ヤフィット・アスリン)が経営しており、彼女は彼を父親のように慕っている。
ルーヴェンは、ガディのソーシャルワーカーであるリャナ(エヴェリン・ハゴエル)から、彼女がガディを優良と考える施設に入所させるまでの少しの間、息子の面倒を見るだけでいいと云われる。
当初、ルーヴェンはガディをお粗末な営利目的の施設に捨てようと考えたが(この筋書きは非常に現実的な問題を浮き彫りにしている)、土壇場になってそれができなくなる。
その代わり、彼はガディを毎日職場に連れて行き、そこでガディは車の掃除をし、リタのカフェに行き、そこでガディはグループの一員となる。時々、他のメンバーにからかわれるが、みんなお互いをからかい合っている。
これは、エルサレムの古い町並みのあちこちに今も存在する、ある種の優しく親切なコミュニティーだそうで素敵な肖像画でした。
しかし、その後、ルーヴェンの健康状態が突然悪化し、腎臓が機能しなくなって透析を受けなければならないことが判明。
年齢と喫煙のために移植には向かないが、家族が臓器を提供してくれればチャンスがあるかもしれない。
裕福な兄(ドロール・ケレン)はその提案に難色を示し、中国に行って腎臓を買ってこいと云う。しかし、ガディがこの状況を知ると、彼は腎臓を提供したいとさえ思うようになる。
この時点で、今作品はガディが腎臓の提供を許可されるべきかどうかという問題に焦点が当てられる。
法的には許されない、しかし、家族は特別に訴える。
これは興味深い問題であり簡単なことではない。ガディは父親を愛している。
しかし、彼は本当に自分の健康が長期的なリスクにさらされること、そして父親が犠牲を払っても助からないという現実的な可能性を、彼は本当に理解しているんやろか?
ガディがこのすべてをどの程度明確に理解しているのかはわからないが、今作品は疑問を投げかけている。
ガディには、愛する父のために犠牲を払う権利はないのか?
複雑な問題です。
これまでこの問題について考えたことはなかったが、映画がこの問題を繊細に探求していることを高く評価したいかな。
まぁ、正直、内容とストーリーテリングはやや淡々とし薄気味で少々退屈する部分も否めないが、それでもかなり見応えのある作品でした。
重さに関係なく日本でも十分に考えていかなばならないテーマだと思いました。
kuu

kuu