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レイスのhorahukiのレビュー・感想・評価

レイス(2017年製作の映画)
3.0
何かが家の中にいる…
古びた屋敷に住む父母娘の3人家族。母の妊娠を機に、家の中で「何か」の気配を感じ始める。それは家族を貶めようとする存在なのか。それとも…。

のむコレ2018にて公開された心霊ホラー。
どこ見ても酷評されている本作ですが、傑作とまではいかないまでも私的にはそこまで悪くはないんじゃないかと。良いとも言えないんだけどね…でもそれってつまりダメなんかな。とりあえず、まあまあでした(笑)

親子ないし家族の間に微かにだけど確実に漂い始める不協和音。大元にあるのは父親の仕事がうまくいかないことによる貧困なんだけど、そこに母親の妊娠が発覚することで大きく家族の心が乱れ始める。経済的な理由で出費を抑えるために引越しも計画してるこの家族にとって、もうひとり子どもを育てることは大きな重荷となってしまう。

本作が描く怪異の正体はネタバレになるので伏せますが、家族の間に漂う不協和音の象徴として描かれている。表面上はうまくいってるし、周りから見てもなんの問題もない家族なんだけど、お互いに全く不満がないわけではない。それを放ったらかしにして毎日を過ごすうちに家族の間に精神的な隙間ができ怪異が入り込んでしまう。

本作が重点を置いているのは「親(あるいは大人)に虐げられる子ども」。そこに悪意がなかったとしても、無意識のうちに我が子を支配しようと考えていないか。子である以上に人として尊重しようという気持ちを忘れてはいないか。娘に対する父母の態度にはあからさまな悪意なんてなくて、むしろ良くある光景ではあるんだけど、子の気持ちを慮ろうという意思が抜け落ちた大人本位の態度と捉えられるところが多くある。子の運命を思い通りに弄ろうとする親の無意識な身勝手さを批判するのが本筋だと思います。

本作は家族再生の物語であり、観客を怖がらせることをメインとしていないため、微笑ましい家族のシーンを意図的に多めに入れているように思います。彼らはどこにでもいる「仲の良い」普通の家族。そんな普通の家族だからこそ、彼らに訪れる崩壊の危機が身近なものとして現実味を帯びて感じられるし、その危機がいかに当たり前なもので誰にでも訪れる(むしろ既に訪れている)ものかということを強調し、観客に投げかけるためにも効果的だったのではないかと思います。

恐怖演出もところどころに良いのがある。消したはずのテレビが勝手につくという良くある演出ひとつとっても凄く丁寧。画面内外への移動や音量の強弱によりメリハリをつけており、犬により空気感を調整しつつスムーズにフェイドアウトさせる。他にも階段での演出は、子にとっての親、親にとっての子の重要性をも表現するナイスなものだったと思います。ポンコツ演出もたくさんありましたけどね(^_^;)

ただ色々とわざとらしすぎて冷めちゃうんですよね。親子関係の現状と今後を最も象徴する存在である怪異についても描きすぎだし、丁寧なのは良いんだけど丁寧にやり過ぎて鬱陶しい。あとクライマックスの展開は謎…。神父のくだりはマジでいらないと思う。悪魔モロクは本作のテーマを表した存在だけど、ダメ押し感があってそこまでせんでも…ってなった。

ついに『ミスター・ガラス』が公開されますね。今日『アンブレイカブル』の復習が終わったので『スプリット』も復習しとかないと。ついに三者が揃うからめちゃくちゃ楽しみです♫ホラー要素があるといいな^_^
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