とりん

蜜蜂と遠雷のとりんのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.0
2020年29本目

恩田陸の同名小説を実写映画化。
ひとつのピアノコンクールを舞台に4人のピアニストに視点を置いた作品。

正直ストーリー的な部分の内容は薄く感じた。
何が伝えたかったのかもよくわからず、至る所に拾いきれてない疑問点が残ってしまった。
松岡茉優演じるエイデンがメインというのはわかる。
7年前、母の死をキッカケにステージのドタキャンにより表舞台から姿を消した天才ピアニストが、最後にピアノと向き合うために出場する。
コンクールで再会した旧友のマサル、新時代の天才風間塵、生活者の音楽を奏でる高島明石を通して、最終的にドタキャンというトラウマを払拭し、ピアノの世界に帰ってくるというのを全体で描いている。

エイデンに一番影響を与えたのは風間塵で、彼との連弾によりピアノの楽しさを、逃げ出そうとしたコンクールを彼の音で足を止め引き返すことになった。
そこで「おかえり」と声をかけるのは印象的だった。

次に松坂桃李演じる高島だけど、準主役に見えるが、全然背景が入ってこない。
普通の生活をしながら年齢制限もあり物理的にピアニストへの最後の挑戦をするのだけれど、イマイチ彼の心情が読み取りづらかった。
残りのマサルと塵については、ほぼ汲み取れなかった。
塵と本線の指揮者として送り込んだ偉大な音楽家ホフマンは名前しか出てこず、結局何だったのかがわからず。
全体的に疑問点や表現が足りない部分が多いために内容が薄く感じるのだろう。

ただ映画全体の雰囲気と音響、音楽は良かった。
ピアノ演奏はもちろんのこと、意味はわからないが馬のシーンの低音など、音の鳴りは劇場で観れば良かったかなと思わせるほど。
映画の雰囲気、作りがどこかヨーロッパ映画、フランス映画を思わせるような独特な雰囲気を感じた。

松岡茉優と松坂桃李はまだ良かったが、他の人たちの演技はイマイチだった。
塵役に抜擢された映画初出演となる鈴鹿央士も悪くはなかったけど、パッとはしなかった。
期待の新人として推したいのはわかるが、エンドロールにまで新人と書かれるのは如何なものか。
とりん

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