めちゃめちゃ面白かったです!
面白い、とは聞いていたのですが、いやはや、面白かった。
一言で言うなら、現代に舞い降りた超絶正統派良質ミステリです!!!!
●近代ミステリのなかでもトップクラスの良作
最近ミステリ作品を勇んで見ると、肩透かしなことが多くて…
平坦すぎたり、かと思えば奇を衒いすぎたり
キャラが好きで、とか、斬新さが好きで、とかはあるけど、やはりミステリとして面白い!というと、新作を見るより、古典作品、、、それこそアガサクリスティとか、、、を見た方が全然面白かったりする、そんな今日この頃。
そんな中でも、ナイブズアウトは、まさきく王道のミステリ映画でありながら、平坦すぎない、奇を衒いすぎてない、現代によくこんな正統派とユニークを両立させた作品が生まれてこれた!すごい!と涙したくなる様な作品でした。
全国のミステリ好き集まれー!!!って思っちゃいました。
とはいえ私はミステリの専門家でもないですし、言うほど見まくっているわけではないので、全然素人意見なのですが。
それこそミステリ本格的に好きな人たちからしたらどんな作品に映るのかは気になります。
●アガサクリスティに捧げる映画
調べてみると、アガサクリスティに捧げる作品というか、いろんな作品を読み込み、彼女へのリスペクトとオマージュをふんだんに込めた作品に仕上がってるみたいですね!
でも、それをやろうとして、実際にちゃんとここまで完成させられるのってすごいです。
この監督の作品を見たのは初めてですが、過去作を見る限りではそんな面白そうとは思わなかったので、いい意味で期待を裏切られました。
●絶対に外さない舞台設定
ミステリとして、まず舞台設定が面白かったです。洋館、富豪の死、癖のある家族、登場キャラクター、、、
さすが、古典ミステリリスペクト作品だけあって、これが見たかったんだよ!!!という、開幕からテンアゲですよね。
ありがちな設定とノリではあるんですが、しかし新鮮味もちゃんとあったのが、評価されてる最大の要因かな、、、と思います。
一方で、抑えるべきところは抑えてる。細かいところで、あるあるではあるけど、グッとくる細かい演出がふんだんに詰まっていて、小さな伏線とその回収の繰り返し。中身がたっぷり詰まった満足度の高い一本。
特にナイフがぶわっと貼り付けられた椅子のデザインはかなり面白くて、そのビジュアルだけでかなり引き込まれました。
●オールスターキャストの豪華さ
あとは俳優人ですよね。そこはそんな重視してなかったのですが、オールスターキャスト!!主人公の看護師かわいいなーーーって思ったのですが、ブレードランナー2049に出てたアナデアルマスさん。あっちで可愛くて好きになったけど、みんな同じこと思ってたらしくて、彼女目当てでこの映画見にきた人も多いとかなんとか。
殺される富豪のおじいちゃん、見たことあると思いきや、手紙は憶えているの主人公!!あの映画でおじいちゃん俳優めっちゃ良いなと思いましたけど、今回もかなり良い味出してました。
もう死んでるけど存在感やばかったですし、キャラもめちゃくちゃ好きです。
あの人の演技はとても良いですね!
あとは、クリスエヴァンス
なんか、丸い気がする
ムキムキなキャプテンアメリカばっかり見てたからかな?それともこの役のために体型作りした?なんか、ちょっと丸く見える…あんまり魅力的に見えないのはなぜだろう。。。俺だけでしょうか笑
本命は探偵役のダニエル・グレイヴですよね
あんまり主役的な感じじゃなかったので、キャラの掘り下げは薄かったです。
最終的に好きにはなりましたが、探偵キャラものを目当てにしてミステリを楽しむ人にはちょっとパンチが足りないかも!
●期待しすぎると微妙かも
展開は、途中までは、ははー、こういうやーつかー。新しいけど…
と思って、世間評ほどではないなぁと思っていたのですが、最後まで見ると評価は変わると思います。
ただ、前評が高すぎるせいで、拍子抜けしてる人もいるみたいなのでご注意です。
あくまで古典のよくできたミステリであって、斬新すぎる超どんでん返しとかは無いです。個人的にはこれで十分好きなのですが、人によってはパンチが足りないと思うかも。
細部まで丁寧に作られているので、そう言うところを見るのが楽しい映画でもあります。
●登場人物+関係性は多め
こう言った映画全部に言えますが、登場人物のパーソナリティを把握するのがとても大変でした。この映画はその演出でかなり緩和してた方だと思います。小説と違って、読み返せない映画で人物を整理しながら見ていくのって大変ですよね。
この映画は仮に人物設定に混乱しても、大切なことはきちんと丁寧に訴えかけてくれるのでそんなに気にしなくても大丈夫だとは思いますが、できるならこの映画のプロモーションムービーは見たほうがいいかも!私はそれがあるって知らなくてまだ見てないのですが、この殺された富豪の3人の子供たちが自分の会社の話をするフェイクCMのムービーがあるらしく、それでキャラクタを印象付けておくと、この映画がより深く楽しめると思いますので!
どこが面白かったからこれ以上具体的に言うとネタバレになるので、総評はこの辺りで。
以下、ラストには言及はしませんが、途中までの展開のネタありで感想です
ーーーーーーーーーーーーーーー
※以下ネタバレ有り!
嘘をつくと吐いちゃうって主人公の設定がまず面白かったです!
どんなミステリになるのだろう!って思ったけど、わりと序盤で事件の全容が明かされちゃうのでびっくりしました!
かなり抜けてて向いてない犯人とダニエルクレイグの気づく気づかない、隠す隠せないの応酬はなんともコミカルで独特の面白さはありました。
もちろんそれだけでは終わってないラストが…( ͡° ͜ʖ ͡°)
とにかくお気に入りの映画!
できるなら、続編つくってほしいなと思います。
【追記】ーーーーーーーーーーーーーーー
2023.01.09
ついに続編、グラスオニオンがローンチ!
ということで友達と一緒に見直しました!
初見の友人も大満足だった映画……
2集目でも変わらず面白い……
というか、1回目以上の面白さかもしれない!
◆以下雑感
●キャラクターについて
相変わらず登場人物は多くて、あれ、これ誰だっけ?とかはなりましたが、2回見て気づいたことは、人物設定がかなり丁寧で、演者の表現やキャラクター像が細かいな!!!!という点
それぞれのキャラクター、場面によって気前が良かったり、敵対的だったりと物語の流れで行動こそ変わりますが、全てにおいてちゃんと理由づけがあって、キャラクターとして説得力がありました。
よくありがちな、物語の都合で動かされている感じがしなくて……うーん、見れば見るほど気づけることが増えそう
●演出面
まず冒頭
「私の家、私のルール、私のコーヒー」
と書かれたマグカップ
最初は、変な文言だな?としか思わなかったし、多分週目の時なんか見逃してた気がする
何気ないこのフレーズ、まさかの最後の最後で再登場し、こんなにもピッタリと合致する意味合いで使用されるなんて鳥肌
https://theriver.jp/knives-out-last/2/
撮影の中でラストシーンに使うアイディアが生まれたとのことで、記事内では「偶然」なんて表現されておりますが、こう言ったライブ感や生のアイディアはむしろ創作における必然であり、独特の煌めきですよね。そう言った現場の声や流動的な制作・アイディアのセンスや活力も含め、一つの作品だと思います。
数々の問題を抱え、爛れるように混迷するスロンビー家の面々を、バルコニーから見下ろすマルタ。
コーヒーカップのメッセージもあいまって、支配者的・勝者、という痛快感もありますし、実際スロンビー家一同は彼女を悪魔のように感じたはず。
でも、視聴者には分かる通り、彼女は最初から最後まで善良であり続け、善良性や慈悲の心に従い続けることで真実と財産を手に入れていました。
そして、最後の最後には「家族を救いたい」「なんとかしたい」とブノワブランに告げて、あのシーンに移るんですよね。
あの構図は、一番悪くて聖人による憐れみ、良くて女神による慈悲。救いの予兆の構図でもあるんじゃないかなと私には感じられました。
支配でも救いでも取れるあの構図で映画を取らせるのは今後一億年評価され続けると思いますわ、
そして、マルタが相続のゴタゴタに際して、手のひら返しのように蔑まれ、罵られ、攻撃され、殺人までさせられそうになり、騙され、脅され……
あれだけ嫌な思いをしたにも関わらず相続を放棄しない強さや、相続だけして家族は見捨てるという選択肢にはならない底無しの善良さ……。
家族をどうにかしたい、救いたいというのは、奇しくも彼が死の直前に、残りの人生で成し遂げたいと言っていた事そのものなんですよね。
2周目で最後の夜のシーン見てまじで泣きました。
マルタは、財産だけじゃなく、ハーランの未練や意思も全て受け継いで、それを成し遂げようとしているんです。どこまでも親友思いで、どこまでも慈悲深く、人間として善良すぎるんですよ……本当にいいキャラクター
●3人の子供に事情聴取
最初に行われるのは娘息子夫婦に対する事情聴取
ピンとピアノの鍵を弾くブノワブランが印象的
あれ何か意味はあったのかな
亡き長男の妻ジョニはメグの学費と言って二重にお金をもらってずっとハーランを騙していたのがバレて援助の打ち切りを言い渡される
インフルエンサーなんだから学費くらいは稼げるんじゃないの?と思うし、横領してた金は何に使ったんだ
次男ウォルトは相続した会社の権利を剥奪されて、突然の無職に
長女のリンダは口が固く家族の絆のようなものを誰よりも考えてそうだし、お父さんの事本当にショックそうだったけど、夫のリチャードが浮気しているという事で義父にバラされる寸前……
殺害動機ありありの娘息子関係者……視聴者には隠す事なくバックボーンを公開して、誰が犯人なの!?誰が犯人でもおかしくない!と思わせるような展開
●からのマルタ
長女の夫の浮気も、次男から会社を剥奪することも、多分長男嫁の横領の件も全部ハーラン本人から聞かされていたマルタ。
心からの親友で、看護師と患者以上の関係だったのかここからも伺える
●ハーランとの友情が泣くしかない
マルタと最後の夜
2人の囲碁の勝負を通しての会話
どれだけお互いが信頼しあっていて仲がいいのか、しみじみとわかるシーン
クズ家族の回想を見せられた後だからこそ、少し非情に見えたハーランさんも、結局は家族のことを気にかけていて、切り捨てる事で濁ってしまったそれぞれに自主性とか主体性とか見出して欲しい、正しく導きたい、と思っているからこその決断と清算だった事が分かって……
まだ生きていてほしかった……。
そこからの、まさかの医療ミス。
ただ、これは真実を知っていると、なおさら辛い。
ハーランは死ぬ必要なかったし、一縷の希望に縋ってでも救急車を読んでいれば助かったのか……と思うと……
しかし、志半ばでまだまだ生きられそうだったのに、自分がもう数分で死ぬって聞き的状況に陥って、なお、逆上するでも遺言を残すでも絶望するでもなく、状況を受け入れて医療ミスをした友人が助かるように完全犯罪計画を叩き込んで説得するハーランおじいちゃん……
友情と信頼のデカさに号泣するし、それで本当に自殺できるおじいちゃんの覚悟たるや
まだ見えない闇があるから、必ず解き明かしてくれ的なセリフ言ってますよね。
多分、真実には気づいてなくても、ハーラン氏、マルタが医療ミスなんてありえないことしちゃったことにも、解毒薬が無くなってたことにもちゃんと違和感があって、真犯人は他にいるって、本能的に気づいていたんじゃないかな……。
1周目でも壮絶な気持ちになるシーンだけど、2周目で更に泣くシーン。ハーランとマルタが寿命まで仲良くし続ける未来も見たかった
●素人の証拠隠滅劇が笑える
さすがミステリー作家だけあって、ハーランさんの計画凄かったけど、今際の即興だし、、、というか、そもそもマルタの能力的にやっぱり無理があった……
車の映像は残るし、足跡は残してしまうし(聞こえなーいとか言ってる踏みまくるの笑う)、犬が壊れた木枠持ってきちゃっても放り投げるし笑笑
結局わんちゃん持っていっちゃうし
あ、こういう、ポンコツ殺人犯vs探偵のギャグテイスト映画か!?と思うレベル
そもそも靴に血がついているのもそうだし、それを最初からブノワブランに見つかっていて、何かしら関わってるんだと目星つけられているのも凄い。
途中までパッとした活躍はしない探偵なのに、実は最初からめちゃんこ優秀。
●フランによる毒殺の話
超ちょうどいいタイミングでマルタちゃんに毒殺の話するじゃんって思ってたら、この時点でもうヒューを疑ってたからっていう
演出的な偶然だと思っていた事が必然だという事が明かされる伏線回収、鮮やかでございます
●マルタの階段を降りる音
妙にでかいな!と思ったんですよ!
リンダが音に過敏だっていうことを知っているはずの、心優しいマルタが、あんなにドスドス階段降りるかな?と
でもあれも、ハーランさんからの仕込み……
帰宅した時間を確認させるのも仕込み
ミステリーではご都合で当たり前に流されがちな細かい部分を理由づけしてくれる徹底振りが伺える
●犬が吠えて目が覚めたシーンの伏線
これも、ヒューが戻ってきたことの伏線だったんだ〜
細かい情報も、真相を知ってるとなるほどなとなる。うーーん、よく作られている
●おばあちゃん(グレートナナ)はどこまで気づいてた?
ダニエルクレイヴこと、ブノワブランはグレートナナは受け答えの能力もあるし、記憶もちゃんとあるし、いろいろなことを知っていると言ってナナからの返事を待っているシーンがありました。
ブノワブラン、地味目で目立たないけど観察力とか推理力はかなり高いと思うので、ブノワブランがそう見立てたなら、やっぱりナナはちゃんと色々わかってな気がする。
勘ぐりにはなるけど、マルタちゃんが降りてきた時、本当はランサムじゃなくてマルタちゃんだってちゃんと気づいてたんじゃないでしょうか。
どこまで気づいていたかは知らないけど、マルタちゃんに対して不利にならないように、ランサムだって勘違いしたことにした……と考察。
ナナざ、ランサムが戻ってきたと証言が取れたってシーンは、マルタちゃんのことと勘違いしていただけ……というオチかと思いきや、実は本当に一度戻ってきたという二重オチで、「また、戻ってきたのかい」の「また」の部分が伏線になってる……ううううなんと!!
●遺産相続
マルタがいうように、マルタが遺産を継ぐことになったのは、マルタが友達だったからとか、マルタが仲良かったから、ということ以上に、周りの家族がダメすぎたから、というのが大きな気がする。
みる限り、ハーランおじいちゃんはもし家族が本当に根のいい正しい心の持ち主なら、ちゃんと遺産を分配してたと思う。
マルタに1人で財産を相続させても、家族から目の敵にされて孤立するだけじゃん、かわいそう
とは思ってしまったけど、ハーラン氏はまだ死ぬ気はなかったはずだし、そうならないようにこれから時間をかけて家族を導いたり、対策を講じるつもりだったんだろうなぁ
●メグはいい子?悪い子?
途中電話をかけてきて心配するふりをして、探りを入れてきたメグ。
裏切り者!と思ったけど、あの異常な家族たちに脅されてたんだろうなと思うと
学校退学は本当だろうけど、仲良くなったメグは親に使い潰されるより友達にこっそり援助してもらった方が得なのはすぐ考えればわかるだろうし
結局誤って和解するシーンもあるし、戸惑いとか違和感とか混乱もあっただろうけど、やっぱり根は優しい子なんじゃないかな
●浮気の手紙
リチャードは手紙を破いて見てみて、何も書いてなかったと安心して放置してしまうけど……
それを見つけたリンダは手紙を炙って……
という最後のシークエンス好きすぎる。
父は謎解きが大好きでいつも子供達にクイズを出してたりしたってずーっと話してたのが伏線になってきいてきた
万一リチャードに手紙を盗まれても、大丈夫なように、娘息子にしかわからないトリックを入れるハーランさん素晴らしい。
リチャード、ラストカットで目が腫れてるのはリンダに殴られたから?
●フランの隠し場所
最後脅迫されてるかもっていう相手でも助ける選択をしたマルタの聖人君主
タバコの隠し場所のシーンは、最後鑑定結果の隠し場所の伏線にもなってたなんて!!細かいところまでよく作られてる
ランサムは全て証拠を処理できたと思い込んでいたけど、さらに予備があるとは気づかなかったようで……
結局フランの最後の切り札の場所を知っているか、知らないかっていう些細な差でさえもランサムはマルタに勝てないし、それが決め手で負けるの哀れ
●マルタの見分け能力
本作最大のポイントで、本作最大の全員の誤算。大番狂せの大事な要素……!
まさかの、中身が入れ替わっていた薬品、本能で見分けられていたという。
ラベル確認せずに投与するのはどうなの!?とは思ったけど、私たちからしたら見た目が赤か青かぐらいはっきりと見分けられていたんだろうな、無意識に。
毎回の作業で赤い液体打ってたらそりゃラベル見ずに赤選ぶよねっていう
最後瓶を手に取らせる時もラベルで隠して取らせて見分け能力を立証するブノワブラン氏、カッコ良すぎる……
●最後の嘘
マルタの最後のウソ
フランが生きてたって
安心した嬉しそうな表情……絶対生きてると思ったのに
自白まで取り付けた最後のウソと、そのあと吐瀉物を吐きかけるシーンの謎の爽快感(吐瀉物なのに)
●ラストのナイフ
引っ込みナイフかーい!!!!
ただ、ナイフ、大量にあったはずだし、絶対に引っ込みナイフじゃないナイフもあったと思うんだけど、それを選んだ運命……
運命までマルタに味方してる感じがして
あーーーーーーーいい映画だヨォ!!!!!!!!!!!!!!