ケイスケ

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のケイスケのレビュー・感想・評価

3.6
『ねじれた家』や『犬神家の一族』、そしてタイトルそのものの『遺産相続』など遺産相続の家族のドロドロを描いた映画って何でこんなに面白いんでしょうね。本作は『最後のジェダイ』を手掛けたライアン・ジョンソンが撮ったと思えない古典的な王道ミステリー…と思いきや実は…?

85歳の誕生日を迎えた世界的ミステリー作家のハーラン・スロンビーが、その翌日に遺体で見つかる。名探偵のブノワ・ブランは匿名の依頼を受けて刑事と一緒に屋敷に出向く。ブランは殺人ではないかと考え、騒然とする家族を尻目に捜査を始める。

この映画、構成が面白いんですよ。ネタバレにならないように言うと、事件の顛末やトリックは割と最初の方の回想シーンで明らかになります。結構長いことダニエル・クレイグ演じるブノワ・ブランは出てこず、メインは犯人側の視点に移ります。

先述したように、映画における親族同士の骨肉の争いってめっちゃ面白くて、本作もその楽しさはあるんです。ただ家族によってはそんなにイヤなヤツじゃない奴も多くて。いくらあるキャラが世話を焼いてくれたからといって、このキャラを家族より優先するとなると単なる色ボケジジイに見えなくもない。

あと嘘をつくと吐いてしまう…というのは絵的には面白いんですが、ちょっと単なる思いつきで入れた設定に見えます。良いタイミングで勢いよくゲボるから笑ったんだけどさ笑。観た人は分かると思いますが、最後のナイフの「スコ…スコ…」の場面は犯人の間抜けさも含めて好きなシーン。

2017年版『オリエント急行殺人事件』もそうですが、昔よくあった豪華キャストによる優雅なミステリー作品を現代でやってくれることは非常に好ましい。ダニエル・クレイグのブラン探偵もナイスキャラなのであと何作かシリーズ化してほしいな。ブランさんの時折見せる煽り芸が好きだったりする笑。