Anima48

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のAnima48のレビュー・感想・評価

4.0
恐竜の図鑑を一緒に見ようよってせがんで来た小さな男の子が、今は髭を生やして車でデートしている、….ほら、時間で人は変わっていくものだから。

通説というのも変わるもので、化石から推測をするという演繹的なアプローチの研究が多くを占めていた恐竜達が変温動物と疑いなく思われていたのが40年以上前、恒温動物だと唱えられ始めたのが35年ほど前。それから羽毛に覆われ、活発な姿が一般的になっていく。29年前のあの夏、驚いて目を見開いたサムニールの視線の先でブラキオサウルスが横切った時、本物の恐竜がそこにいる!!と世界中が驚き夢中になったジュラッシックパーク。それがジュラッシクワールドになった頃には恐竜のある光景は驚愕ではなくもはや前提になっていて、ゲームなどの美麗なCGが溢れた世ではある意味ありふれたものにもなっていた。そこでワールドシリーズは21世紀の撮影技術を使ったリメイク的な演出と開園後のテーマパークのシミュレーションや恐竜の詳細な生態描写や最新の研究動向の反映に務めている。今回は前作から引き続き恐竜の生態の多様さとそのステージの多様さに拍車がかかっていた。

遂に羽毛に覆われた恐竜が出てきた。ピロラプトル、テリジノサウルスの羽毛の表現が素晴らしい。羽ばたけず滑空しかないと言われていた翼竜だけどケツァルコアトルスが羽ばたいている。そして南の島のような熱帯以外にも恐竜がいる!!雪景色の中を走っていて、氷の下を泳ぎ、馬と並走して、イタリアの街並みの中、バイクを追っかけている。・・そしてギガノトサウルスとティラノサウルスが戦う。羽毛恐竜の導入など、研究動向の結果をしっかり反映させていく勇気ってすごいって思う。今後、生態が明らかになって、復元図に変化が出た時はディレクターズカットで対応するのかな?

ちょっとオールスターを見るような気がしていて、アロサウルス(アントロデムス)、ブロントサウルス類(アパトサウルス)といった恐らく昭和時代には代名詞的な地位を得ていたベテラン?恐竜も出ている、アロサウルスがきちんと活躍する本編は初めてじゃないのかな?”ジュラシック”ワールドなのに。テリジノサウルスが出てきたは嬉しい。肉食恐竜と渡りあう草食恐竜ってトリケラトプスとか、アンキロサウルスといった面々が有名だけれど、そこに新たなメンバーが加わったような気がする。しかもあの前足をしっかり活かして、羽毛に覆われて、でも口元は草食恐竜で!見たかったものが観れた気がする。ペルム紀のディメトロドンが出てきたのが嬉しいサプライズだった、トンネルのなかでも脚の付き方が見て取れたのが本当に嬉しい。

恐竜の飼い方教えます!!ってタイトルの人間の暮らしに溶け込んだペットとしての恐竜を描いた本があったけれど、そんな風に人間社会に進出してしてしまった恐竜が描かれている。前回ラストで恐竜たちが世界に解き放たれてしまい、パラダイムシフトの予感で期待を掻き立てられた。限られた施設の中だけじゃなくて、自分の家まで恐竜がやって来るかも!みたいな。テイストは違うけれど、災害カタストロフやディザスタージャンルを期待してもいた。世界中を恐竜クライシスからけれど、少し世の中が落ち着いたような辺りからストーリーが始まる。都市に恐竜を出現してその混乱した様子も描いてくれるけれど割とあっさりしていたように思う。主要キャラクターの旅路は満足が行く結果だったので、外伝的な作品で恐竜対策管理局のような立場の人たちの活躍を通じてそんな恐竜達の姿を見ることが出来たら思ってしまった。だけど製材所入るってしまったブラキオサウルスを一般市民が友好的に落ち着いて誘導するシーン等見ごたえのあるシーンもあるし、軍事利用される生物兵器としての描写もある。意外に恐竜たちが活躍するシーンは時間にすると割と短い。だけど大筋は別として、局面局面のアクションはいろんなタイプの恐竜の出現や、様々な状況での逃走劇が殆どなので十分楽しめたって思う。

じゃあそれ以外に見所はって言うと、スパイものやカーアクションも盛り込まれている。うーん、“ジュラシックパーク ワールドミッション”的な?それでジュラッシックパークにミッションインッポシブルを足して、アバターやインディージョーンズを振りかけて、オーシャンズを少々、96時間で香り付けしたようなテイストの映画になっていたように思う。一個一個のテーマが盛りだくさんだったけれど、イナゴだけにフォーカスして別の一つの映画にしても良いと思うし、見てみたいとも思う。…折角箱庭からオープンワールドに出たのにまた活躍の場が箱庭に戻るのは意外だったけど、あのスタジアム状の場所に恐竜達が集まっていくシーンはまるでアクター達のカーテンコールを見てるようでなんだか寂しい感傷を覚えた。

6作あるシリーズなのでキャラクターの成長がとても嬉しい。メイジー役のイザベラ・サーモンが素敵に成長していて“ウイッチ”のころのアニャテイラージョイのような雰囲気を纏ってた。ローラダーンの成熟した魅力、プライスダラスハワードの母性を感じさせる表情やアクションもこなす様子が素敵だった。実際に生きている恐竜がいる世界でも情熱を持って化石を発掘しているサムニールをみると少し安心した、生き物って生き延びる道を見つけるんだなって。帽子姿はインディジョーンズのようだった。

パークからドミニオンまで人類の倫理感を扱ってきた、もう30年以上になる。想えばジュラッシクパークが登場したとき、外来生物などの既存の生態系を壊す生物は現在ほど大きく扱われていなかった気がする。今回恐竜たちは人間が保護する動物園の中ではなく自由に生活できる場所に生きることになって、そして登場人物は皆最善の策ではなく、より良い道をとるようになる。恐竜復活のキーパーソンでもあったウー博士の終盤の選択に至る心境の変化をもっと丁寧に見たかった。は恐竜にこの星の生態系の支配権が移るのではなく共存していくことに落ち着いていくことになる。ただもう少し共存までの過程を丁寧に眺めたかったけれど。(恐竜の食性や消費カロリーを考えると、なかなか難しいんじゃないだろうか?)21世紀のこの時代には、外来生物とも共存の道を探すのだろうか?ラストシーンを見てそんな感慨を抱いた。
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