ymd

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りのymdのレビュー・感想・評価

3.9
正真正銘のB級超大作であるが、それに対する負い目も引け目も一切感じさせない清々しさたるや。

エンターテイメントとしての機能性を完璧に全うする潔い傑作バカファンタジー映画が新たに誕生した。全然期待していなかったけどたまたま時間が空いたので鑑賞したがこれが大正解。これは映画館で観るべき作品だ。

トリッキーな演出とか気の利いた展開なんてものは歯牙にも掛けずに徹頭徹尾、ファンタジー・アドベンチャーモノにおけるド直球の王道路線を踏み抜いたその覚悟がまずもって素晴らしい。

そもそもがこの手のジャンルの元祖とも言っていいTRPGを原案にした映画作品なので、ここから派生したジャンルモノの数々によって擦られ過ぎた舞台設計やセンテンスに目新しさは皆無なのだけど、ここまで無邪気かつ堂々と邁進されると「これでいいや」から「これがいいや」に気持ちが変えさせられてしまうのである。

アクション・アドベンチャー映画ならではの壮大でダイナミックなアクションシーンは見応えがあるし、その迫力のあるシーンの最中にあっても常に途切れることのないオフビートなギャグの応酬はクドさを感じるギリギリ一歩手前の絶妙なバランスを保っているのも素晴らしい。

クリス・パイン演じるエドガンの非マッチョなヒーロー像とかミッシェル・ロドリゲスの女戦士ホルガのバックボーンの描き方などキャラ造形は思いの外かなり丁寧に組み立てているのもチームモノである本作にとって非常にポイントが高い。

あくまでも“ファンタジーな世界において”という作品の雰囲気を破壊しない自然体なムードで昨今のポリコレの過激な潮流にも配慮した作りになっているのも見事である。

身も蓋もないことを言えば娯楽にメーターを振り切ったポップコーンムービーなので「楽しかったかそうじゃないか」だけがこの映画の評価軸なのだと思うけれど、その意味では本作は紛れもなく傑作だし、着実に暗い方向へ歩みを進める現実世界にとってこの映画の明るさはエンターテイメントの持つ希望ですらあると思うばかりである。

バカ映画は本当のバカには作れないものであり、製作者の本気度がビシビシと伝わってくる愛すべきボンクラ映画であった。
ymd

ymd