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ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

 ダンジョンズ&ドラゴンズというアメリカ発祥のテーブルトークRPGの映画化。今まで三部作として映画化されてるが評価を見る限りなかなかのクソ映画らしい。今作はそんな作品にリブートとして恐れ多くも果敢に立ち向かったのではないだろうか。ただ日本版のCMの「脳みそくん?」のくだりも激冷め案件で、さらにエンドロールの曲が日本のアーティストにさし変わっていたりと、前評判がガンガンに足を引っ張るという、かわいそうな作品だった。友人にも”道連れ”と称され連れてかれる...。

 映画冒頭、吹雪の中、囚人が護送されてきて刑務所に移送されるのだが、これが謎に「ジュラシック・パーク」の冒頭の恐竜移送に似てて、オマージュかなと思った。その後、その移送された怪物は独房にいた人物の逆鱗に触れ殺される。そして、主人公は怪物でなくこっちでしたという若干の裏切りを見せる。その後、主人公エドガンが恩赦を受けるために過去を回想シーンを挟んで語っていくが、一部「雨に唄えば」冒頭の、言ってることと回想の映像のギャップが面白いみたいなのが使用されている。またサイモンが兜と”同調”するシーンもめちゃスターウォーズ。確実に面白いが、逆に言えば既視感しかなかった。笑えるシーンも笑えるんだけど、読めちゃう。ラストカットで蘇った死体のサービス笑いとかも、「この手の映画にあるよなぁ」と。ゲームの展開ってそもそもそういう”お決まり”が多いから仕方ないか。

 また、そうしたその場その場での展開は面白いが、総体として「何が目的だっけ?」感が不意に沸く。こればっかりはRPGの場面場面でその都度クリアしていくという構成と映画の構成の折り合いが良く無いのだと思った。最近庵野作品が詰め込みすぎと言われるが、アニメ畑出身でエピソードを幾つも連ねて構成してくるやり方と映画の尺の折り合いが良く無いんだと思う(庵野さんへ飛び火。「エヴァ」は序破Qとかそもそもエピソード分けたから成功したんだろうな)。そして、結果的に盛り込みが多くなると省略が多くなる。そこで、順序立てて説明したり事を運ぶべき点をついつい省略してしまうことになる。特に今作の奇妙なクリーチャーたちは、何の出し惜しみもなく出されていくので、観客として彼らとのファーストコンタクトしていくような親密さがない。本国アメリカじゃお馴染みのゲームだから仕方ないかもだが、「お前なんだよ!」と思いながらそいつが活躍しだすと、一歩のり遅れるというか。あと前の場面と次の場面が矛盾し出したりね。5つ質問しきらないと蘇ったままなら、それで母さん一時的にも生き返らせられるんじゃ?という疑問が拭えない。

 連なりとしての場面場面の接続は弱いが、いきなり最高点叩き出すみたいな流麗なカメラワークと胸躍る展開が”瞬間的”に訪れる。重力反転のてんやわんや、ドリックの変身術を巧みにこなして逃走するシーン、ラストでソフィーナ相手に各々の武器や魔術でもって猛攻しそれをいともたやすく交わされるシーンなど、これこれ!みたいな部分は眼福(時間停止ってやっぱり発動した奴から同心円状にグワッと広がる感じなんだなぁ、DIOもそうだし笑)。

 娯楽作ってエンドロールとか凝るよなぁと思った。それ以外にも娯楽作には決まりごとが多くて、映画づくりで一番メンドくさそうだなと思った。恋愛入れたり(サイモンとドリックの関係)、御涙頂戴必須で(ホルガの死、ただ蘇らせるの秒で感情が追いつかんのよ)、勧善懲悪で(フォージが徹底的に落ちる)…。あとゲーム設定と映画のリアリズムをどうするか問題だな。今話題の「マリオ」がそこどうしてるか気になるな。

P.S.
 ヒュー・グラント元気してた。お茶飲んで皮肉屋で裏切りしたり、イギリス人の嫌なやつ感満載だったけど笑。
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