とりん

THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~のとりんのレビュー・感想・評価

3.7
2023年11本目

友だちと日本に行くという夢を持った少女が、その渡航費などのお金のために裏稼業に手を染めてしまう話を描いた作品。
現在は税関が厳しくなり少なくなったらしいが、香港と中国・深センの国境を陸続きとなっていることを利用して違法売買を行なっているの実情を描いている。
それに青春の瑞々しさを合わせ描くことで、このリアルさをより際立たせている。
こういう映画を観ないことにはこういった裏事情などを知ることもなく過ぎてしまっている。だからこうして伝えることの大切さとしても、この映画の意味はある。
そしてその運び屋となるのも主人公の女の子をはじめ、若い子たちばかりだ。
それぞれが複雑な事情をかかえ、お金をほしくてこの稼業に手を染めてしまっているのだろう。その理由や細かいところの説明が描かれることはないが、逆にそういうのは画面から読み取るべきことで、ありのままをリアリティに描いている。
家庭の事情とかもありがちなんだろうなと思ったり、その辺りも彼女たちの行動にすごく影響しているだろう。
日本に行こうという友だちとのやり取りもまた青春らしい。好きな男の子について語ったり、学校をサボって遊びに行ったり、パーティーに参加したり、そういう青春ものの一面もしっかり持ち合わせている。だからそういう表向きなところと、犯罪が絡んだ裏の面がより引き立つのである。恋愛とまではいかないけれど、少し淡く感じるハオとの恋愛模様も見どころでもある。
淡々と描いているようにも思えるが、こちらが想像しているよりこの映画がもつ意味は大きく感じる。
香港でも高校生がパーティーとかするんだなとか思ったりもしたし、こんなに近い国なのにまだまだ知らないこともたくさんあるんだなと素直に思った。普段アジア映画をほぼ観ないから、こういうテイストだったらすごく観やすいなと感じた。
とりん

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