ゲイリーゲイリー

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.0
これまで誰からも対等に扱われてこなかったザック。
兄の面影を拭いきれず、厭世的な気分で日々を送るタイラー。
彼ら二人が互いの存在によって次第に前向きになっていく展開はベタではあるものの、俳優たちの見事な演技によって思わず頬が緩んでしまう。

また、彼らの旅の背景となるアメリカの雄大な自然も、彼らの絆に勝るとも劣らないレベルで美しい。
様々な生物が生息する湿地帯や大海原の水面に照り返す夕日。
あまりにも無計画で無謀な旅だなと思っていたが、これほどまでに美しく広大な自然を思うがままに旅できるのなら無謀でも少しやってみたいかも。

ただやはり最後までご都合主義感が拭えないな、と違和感を抱いてしまったのも事実。
先述したように、こんなに無計画で無謀な旅がここまでうまくいくのか?と冷めた視点で観てしまったり、そもそもタイラーのやった事って逃げていいレベルじゃないよね?と思ってしまったり。

しかし一方で、そもそもロードムービーって日常からの脱却を描くものなので、寓話性というかどこかファンタジー的な要素が含まれてしまうのもやむを得ないジャンルだよなとも思う。
まぁ私はミュージカル映画に対しても、何でこの流れで歌うねんとか思ってしまうタイプなので、先述した違和感を抱くポイントは他の人と比べてかなりズレているかもしれない。

要するに、登場人物たちのやや非現実的な旅に無謀だなと感じるか、広大な自然を旅する過程で深まっていく絆に羨望の眼差しを向けるかで本作の評価は決まると思う。
違和感を抱いたとか、上でごちゃごちゃ書いているけど決して嫌いにはなれない作品だった。
もう一度観たいかと聞かれるとちょっと返事に困るけど。