レオピン

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのレオピンのレビュー・感想・評価

3.8
サム・メンデス『1917』のサブテキストとも呼べる作品。
こちらの方を後から観たが、実にリアルな作り込みがなされていたことに驚愕した。塹壕の状態や砲弾の痕、犬を連れている兵士とか。ただ兵士の歯並びの悪さだけは再現するのはむずかしかったか。

みんないい笑顔だった。前線にいた彼らがどうしてあんな顔をできたんだろう。

捕虜になったドイツ兵は皆毅然としていた。イギリス兵を憎んでいるものは少なかった。全部真に受けるわけにはいかないがクリスマス休暇のサッカーの逸話もあるし、そういうものなのか。

人類初の総力戦は4年3か月で終わったが、彼らの戦争は決して終わらなかった。帰還兵は社会から受け入れてもらえずに職にすらありつけなかった。無理解、偽善、冷血にさらされた。

何日間も塹壕につかりながら足が腐り、シェルショックで頭がおかしくなっても、一般社会のとりすました顔の方が何百倍も非道い仕打ちだった。

彼らに同情しなくてはと思うこと自体が不遜だ。たとえ敵国同士であっても、分かるのはあの時同じ体験をしたものだけだろう。戦争を終わったもの、ないものとすることで語ることすら許されなかった彼らの二重の苦しみ。

反戦教育の欠陥があるとすればそこだ。語りたいという思いにフタをしたのは市民社会の論理じゃないか。言葉を奪われた彼らに代わってこの作品を見よ。

映像の持つ力は本当にすごい。
レオピン

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