むぎちゃ

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのむぎちゃのレビュー・感想・評価

4.0
「ドイツ軍との戦闘が近づいていた」
モノクロフィルムに命が吹き込まれる瞬間、タイトルの『彼らは生きていた』が脳裏をよぎる。

戦争とは教科書の見開きなどではなく、我々が生きている世界の過去と未来の地続きに存在するものだと痛烈に刺さる、中々に異色のドキュメンタリー(?)映画だった。

当時を生き抜いてきた人達のインタビューとその生々しい映像とともに、戦争の中にある滑稽さと笑顔と目の前の死が入り交じっているカオスがひたすらに恐怖を煽る。

特に印象に残ったのは
終盤10分間の地獄と、殺す対象だったはずのドイツ軍との笑顔でのコミュニケーション。
このギャップもまた恐ろしい。

それと終戦を祝う気力もなく感情の抜け殻になった彼らと、彼らを待っていた世間の冷たさ。
帰ったところで仕事もない、冷遇される、そもそも誰も戦争に興味を持っていない現実。
結局世間は戦争の現実を全く理解していなかったのだ。
文明的な戦争なんかではなく、泥とシラミと砲弾と死の臭いが立ち込める現実を。

イギリス軍もドイツ軍も共通認識だったように、戦争に意味は無い。
本当にそれを理解出来るのは、その地に立つ人達だけだろうか。
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