このレビューはネタバレを含みます
3.11の衝撃を思い出した。
地震や津波の惨状はすごく印象に残っていたけど、正直福島第一原発事故の事はあまり記憶に残っていなくて"すごく危険だった"という曖昧なものだった。本当に情けなくなるくらい映画の中の用語もあやふやで雰囲気で読み取っていたけど、それでも衝撃的なほど心に刺さる内容だった。
福島原発に津波が襲いかかる時の津波の建物を覆い尽くすかのようなあの大きさ、流される車や人の無力さが画面越しに見ても恐怖を感じる。
原発の中でベントを行う時の「決死隊」と表現する職員達の覚悟と、容易に早く突入しろと言う東電本店や閣僚達の差になんとも言えない悔しいような気持ちになった。日本や国民の事を考えると最悪の事態を避けるためには絶対に必要な事ではあったけど、それを命をかけて行く人の気持ちをなんだか軽く扱っているようで悲しくなった…本人達に原発から守りたいという気持ちがあったとしても本当に切ない。堪え切れない思いを持って挑んでいるという事を示すように吉田所長(渡辺謙さん)が会議で「決死隊です」と物申した場面はぐっときた。所々、現場で最善を尽くそうとする時、閣僚や本店から茶々が入るのは見ていても鬱陶しかった…でも仕方がなかったんだろうな…どうだろう。
決死隊を募る時、多くの人が手を上げたのは本当に驚いた。自分だったら絶対手を上げる自信はない。それと決死隊に若い人は行かせないという言葉に、それでも自分は行くという若者と、彼らに「第2・第3の復興がある」と諭す総務の女性の言葉はとても印象的だった。体力的にも精神的にもギリギリの所であんな想いや言葉が掛けられるなんて本当に素晴らしいと思う。
見ていて辛かったのはベントに失敗して「すみません」と無念の涙を流す2人の姿や、何度か爆発が起こった後に吉田所長が必要最低限の職員だけで施設に残ると決めた時、死を覚悟して家族に遺書をメールで送ったりする場面。終始泣きながら観ていたけどここは嗚咽が出るくらい涙が溢れてきた。
地震・津波で大変な事になっている！と表面化されているものの裏で、命をかけて原発事故から住民を守っていた人達がいる事をこの映画できちんと知れて本当に良かった。あんなに沢山の人が命をかけて最悪の事態を防ごうと戦っていたという事実は絶対に忘れてはいけないし語り継ぐべき事だなぁと感じる。Fukushima50を尊敬する。
最後は復興や五輪に繋げて希望を感じさせる終わり方で、気持ち的にすごく救われた気になった。この映画を3月11日に観る事ができて良かったです。
