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リチャード・ジュエルのhachiのネタバレレビュー・内容・結末

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

なんだか映画のほとんどを泣きながら観ていたような気がする。クリント・イーストウッド監督の作品本当好きだ。2時間あっという間と感じる程面白くて、実話ベースだから脚色ありきだとしてもこんな事が本当にあったんだと真剣な目で見る事ができた。

「ジョジョ・ラビット」を最近観て引き続きサム・ロックウェルの格好良さを痛感する。良すぎでしょ…最高かよ。

ジュエル自体はずっと"人を助けたい"と思っている献身的な人柄で、最初は法を遵守することが大切だとは言っても取り締まる資格を伴っていない事から周りからやりすぎだと疎んじられている状況での爆弾事件。私も最初はやりすぎ…と辟易していたけど、その正義感がなければ公園での爆弾から多くの市民を守れなかったと想像すると、今回の事件と彼との不思議な縁を感じずにはいられない。
弁護士であるワトソンの言うことも聞かず、ショウ達FBI捜査官の口車に乗せられて喋り出すのなんで?とヤキモキ…ジュエルにとっては最高に尊敬できる憧れの職業の人達だったから敬意を持って応じていたんだと思った。にしても喋りすぎだよ〜ワトソンとの信頼関係大丈夫?と心配までしたのに…お人好しなんだなぁ。
弁護士のワトソンも本当に良い人柄だった。乱暴な言葉遣いだし態度に遠慮がないけど、10年前に初めて会った時、彼のことを"レーダー"と呼んで対等に接していたり辞職するジュエルに「君は警官になれる」と送り出したりと人情的な部分が大きく見える所がすごく魅力的。
そんな2人の関係も良くて。強い言葉でジュエルとぶつかり合ったり、対等に接してくれたワトソンに信頼を寄せるジュエルだったり、やり切ったジュエルによくやったと声をかけるワトソン、ここから反撃だの2人本当に好き、格好良い。最初のゲーム張り合いも面白かったな。どん底に落ちていくツライ流れの中でも2人の関係を見ていればなんだか希望を持てた。

それにしてもFBIのガバガバ捜査に本当イライラした。ワトソンでも後に記者のキャシーでも実証された現場から使用された公衆電話への所要時間といい、訓練のためのビデオ撮影と称してなんか怪しい文書にサイン強要といい(そこでジュエルの機転でうまくいかなかったのはスカッとしたし、さすが法執行官を目指している身だと感心した)、もう少ししっかりしてくれ〜と言いたい。実際の捜査はそういう事の積み重ねなんだと思うけど…

英雄として誇らしく思っていた息子が、一転容疑者として世間から槍玉に挙げられるのをそばで支える事しかできないのは母親にとって本当に絶望的だったんだなぁと想像できる。表情から端々に感じられる悲壮感や屈辱感、どうしたら息子を守れる?と涙するシーンはただただ胸が痛くてつらかった。会見でのスピーチは、母の子を守るという強い決意と理不尽な世間と戦う勇ましい姿に涙腺崩壊するほど圧巻なシーン。(行動が振り切れてて破茶滅茶だったスクープ狂の記者キャシーが、母の会見で見せた涙から彼女の後悔が感じられて結構好き)
そこから今度は自分の番だとばかりに捜査官達へ反撃をするジュエルは格好良かった。最初から最後までジュエルが気にしているのは"人を助ける"事で、この事件を機に同じ騒動があれば次の発見者はジュエルの二の舞はごめんだ、と爆発物に対して見て見ぬ振りをしてしまうのではないかと危惧していたという事。自分があんな目に会ったのにそこから先の他人の事まで考えが及ぶというのは普通ならできない。彼の想いにはただただ感動した。彼の英雄として賞賛される時、自分はただ仕事をしただけで本当の英雄は救助隊員や避難させた警察官達だっていう言葉はすごく好き。

あんまり関係ないけど捜査官がジュエルに犯行声明と同じ言葉喋らせたシーン、映画の予告で散々勿体ぶらせていた場面なのに、実際にはあっさり話し出したなと呆気に取られた。後になって窮地に追い込むんじゃないかと焦ったけどそんな事もなくって…そこがすごく印象に残ってちょっと面白い。
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