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ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋のHKのレビュー・感想・評価

3.5
すごい邦題ですが原題はシンプルに “PAULETTE”(ポーレット)。
主人公のおばあさんの名前です。
ジャケ写はなんだかホラーっぽいですがコメディです。
CSで放送中のフランスの老舗映画会社「Gaumont」の未公開セレクションの中の1本。

オープニングでテンポのよい音楽とモノクロ映像で主人公が若かりし頃、最愛の夫と始めたケーキ屋が商売繁盛していた頃が描かれますが、この若い頃の主人公がとてもキュート。
まさか本人じゃないよね。
しかし画面がカラーになり現在になると、今や店もなく夫も他界し、年金で細々とひとり貧しく暮らす毒舌バアサンと化したポーレットが映し出されます。
家賃を滞納し家具も差し押さえられたポーレットばあさんが思いついた一発逆転のビジネスは大麻の密売・・・

冒頭、ポーレットが教会で告解するシーン、今の自分の境遇はアジアやアフリカからきた移民の侵略者のせいだと嘆きますが、カメラがパンするとそれを聞く神父も黒人。
このポーレットばあさん、とにかく口は悪いわ差別はするわ、黒人の娘婿や孫まであからさまに毛嫌い。
「どうしてオバアチャンは僕が嫌いなの?」と聞く幼い孫に「黒人だから」と言い放つ始末。

でも、あるキッカケでこの孫とも仲良くなり、一生懸命に大麻入りのクッキーやケーキを作っているのを見ると、だんだんとこの毒舌バアサンを憎めなくなり、不謹慎ながら商売を応援したくなってきます。

ポーレットを演じるのはヌーヴェルバーグからの重鎮というベルナデット・ラフォン(『私のように美しい娘』)。でも本作公開の翌年には亡くなっているようです。
終盤のツメが甘いのが難点ですが、最後は心あたたまるフレンチ・コメディでした。
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