前半は退屈でしたが、後半はかなり入り込めました。やや既視感がある印象ながらも、なかなかの佳作だったと思います。
ヒトラーユーゲントに所属するジョジョはナチの価値観にどっぷり浸かっており、イマジナリーフレンドとしていつも心の中のヒトラーと対話してます。ジョジョは優しい少年なので兵士としてはパッとせず、ヒトラーに励まされています。
やがて、リベラルな母親が家に匿っていたユダヤ人美少女・エルサと出会うことで、ジョジョの硬直した価値観が変化していく…というストーリー。
本作の場合、イマジナリーフレンドといっても、洗脳の象徴なんですよね。この時代の少年ならば仕方ないのかもしれないですが、ジョジョはナチに洗脳され、ユダヤ人=悪というイメージを植えつけられています。
で、洗脳から脱却していくのは、本作の場合、偏見対象との実際の交流なのかな、と。エルサと対話を続けていくうちに、少しずつジョジョの中で何かが変わっていきます。思い描いていたユダヤ人と違うぞ、なんか可愛いし…みたいな感じで少しずつ刻み込まれた偏見が緩んでいくのです。具体的には、心の中のヒトラーに従わなくなる場面が増えていきます。
ジョジョが洗脳からの脱却をしていけたのは、母親がジョジョを無償の愛で包んでいたからだと思います。愛されたからこそ、未知の相手を断絶せずに受け入れることができ、相手を少しずつ知っていけたのではないかと思います。冷たい母親だったら、きっとジョジョは本作のような勇敢で魅力的な少年に成長せず、『小さな独裁者』のあいつみたいな野郎に成り下がったかもしれません。
あたたかくユーモラスでリベラルで勇敢な母親を演じたのはおなじみのスカヨハ。俺はスカヨハ大嫌いだから何をしても良いとは思えないのですが、本作はさすがに説得力がありました。嫌いだが認めざるを得ない、って感じです。
あと、好きな人ができて、少しずつジョジョがたくましくなっていくのも観応えありました。実際、面構えがどんどん良くなりましたからね。その辺の演出も上手かったと思います。まぁ、10歳くらいの時に、家にあんな美少女がいたら人生頑張りたくなりますよ。ジョジョにとって年上ってのもイイ！
本作はナチの話でしたが、SNSとかで分断を煽る現代にも通じる話…というか、そのあたりのことをテーマしにているようにも感じます。本作は耳で聞いた知識のみで敵認定し、硬直したヘイターたちへのアンチテーゼのように思えました。硬直の反対は柔らかく曲線的に動くことであり、それ即ちダンスですから。本作におけるダンスは、自由・愛・わかり合うことの象徴のように感じました。
前半のギャグパートが好みでなく(なんかベタで笑えない)、ドイツの話なのに英語だったり、説得力ありつつもやっぱり生理的にウザくて無理なスカヨハ演技があったりと、微妙さや苦手さを感じる場面も多いガーエーでしたが、全体としては良き映画だったと思います。
演者としては、どことなくユニークなユーゲントの教官を演じたサム・ロックウェルが素晴らしかった！後半はヤツがかなりいい所を持っていきましたね！
ユダヤ人美少女エルサを演じた子も清楚な感じで良かったです。ジョジョの子は可愛らしいだけでなくタフな雰囲気も感じたので、子役の呪いを受けずにいい感じに成長してほしいところです。
