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グッド・ボーイズのymdのレビュー・感想・評価

グッド・ボーイズ(2019年製作の映画)
3.9
ジュブナイルモノとして実は最高に真っ当な本作。ちょっとコーティングが過激ではあるけど。

現代版『スタンド・バイ・ミー』として謳っても間違いない傑作だと思います。

『ルーム』や『ワンダー 君は太陽』などで難しい役どころを見事に演じたジェイコブ・トレンブレイ君が今作は等身大の12歳を熱演。
どうやら彼が実際に通っている学校で撮影したらしく、そういう細かな作り込みが功を奏してか、非常に自然体な空気が流れているのが素晴らしい。子どもたちがみな「年相応の背伸び感」を自然に演じているのがとっても楽しい。

全編を通してほぼ下ネタが展開されているうえ、そのネタもけっこうキツめなので、子供たちが主役なのに子供向けではないという何とも歪な構造になっている。まあろくでもない大人たちがろくでもない思春期を回想するための映画ということである。

『ソーセージパーティ』も一見は子供向けのようでまったくその真逆を行く凶暴なアニメだったわけで、セス・ローゲンの目指している道は非常に明快である。

コメディとしての精度は非常に高く、爆笑と微笑みと引き笑いと冷笑が続くのだけど、ただのギャグ映画ではなくてきちんと現代的な記号を織り込んでいる。

ビーンバッグ・ボーイズの三人はそれぞれが同世代の”イケてる”グループたちに対してルサンチマンを抱いているけれど、そこからの脱却と成長は三者三様で見事だし、そのどれもが非常に現代的な態度であるのがすごくよかった。

同時にワインスタイン事件意向のハリウッドを取り巻くジェンダー表現の在り方にも実は配慮が見られていたりするのも現代的。

こういう男性中心のコメディモノというのはミソジニー的な論法で安易なギャグに走りがちだったところを今作はしっかり笑いの要素を残しつつアップデートしている(ように見られる。結局きわどい描写をどう受け止めるかは観客それぞれに依るわけだし)。

そしてちゃんと「青春の終わり」についても丁寧に描写していることで、刹那的な無償の友情の美しさというものまで感じさせてくれるのである。まさかこの映画にそんな感動を覚えるとは微塵も思わなかったのでびっくりしてしまった。

セス・ローゲンの盟友ともいえるジョナ・ヒルが監督した『mid90s』も多感な少年期の苦悩と輝かしい青春を切り取った傑作だったけど、今作も広い意味では同じ目線を向いている。だいぶ様子は違うけど。

アメリカのアホの代表たちが同時期にこういった映画を撮っているということがとても面白かったです。
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