君の名は。が愛される作品とするなら、天気の子は憎めない作品と捉える。先に言えば私は天気の子の方が好きだ。
君の名は。は主人公がヒロインと世界を救う形で展開するため、誰しもがそれを応援したくなる。
それに対し、天気の子は主人公がヒロインか世界、どちらを救うか選択を迫られ、世界を選んだヒロインを救い、世界を切り捨ててしまうのだ。沈んだ東京に対して、この辺りは昔海だったのよという言葉で片付けられる事案ではない。
しかし、いいじゃないか。主人公にとって一番大切なものは世界じゃなくて君なんだもの。
映画はこうじゃないと!と言われた気がする。間違いなく誰もが予想できなかったストーリーである。
ところで、本作を手掛けるRADWIMPSの過去作品に『ます。』という曲がある。とても軽快な曲にのせて唄われる歌詞の中に既に本作に通じる世界観を垣間見ることができる。
あなた一人と 他全人類
どちらか一つ 救うとしたら
どっちだろかな?
迷わずYOU!!!!
新海さんとRADWIMPS。
唯一無二かと。
もう一つの魅力は、本作での須賀という人物だ。ぶっ飛んだ主人公とヒロインを引き締めるには大人の視点で物事を見る人間が必要だ。自分は主人公でもヒロインでもなく、この須賀という男に傾倒してこの映画を見ていた。
新海さんは須賀を丁寧に描いた。妻を亡くし、子供とも離れて暮らす背景。時折り指輪を触る仕草。
そして、主人公とヒロインが盲目的に進む中、それを制止できた立場にいながら、そうできなかった。
なんで泣いてるんだ?
警察に言われた時にハッとしたのは
須賀だけではないはずだ。