Cozy

TENET テネットのCozyのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

よくノーラン監督の映画は難解で一度見ただけでは理解できなくて、一時停止や巻き戻しをして見たいと思わせる。
巻き戻すことでもう一度状況を理解したいと考えるのだが、今回はノーラン監督自体がまさに巻き戻しというトリックで伏線回収を繰り広げてくる。
しかし、巻き戻すことで状況が理解できるかといえば、さらに複雑と化すのでこちらはもうついていくのに必死。
よく言われるように映像の凄さを堪能しようじゃないかとストーリーを追うのを早めに諦めてしまうのも正解かもしれない!
でも、やっぱり諦めたくない!
そう思って食らいつくと、今回も自分がノーラン監督の最も好きなところ、どんだけトリッキーなことやってても、描きたい真髄は結局エモーショナルで泥臭い人情劇な部分が色濃く出ていた。

その鍵を握る人物がニールであることは間違いない。
今回のテーマは恩返しか?絆か?はたまた時間を超越した友情か?のような熱い部分が真の主題だ。
TENETがあらわす真ん中のNの文字、最後の10分(TEN)間の挟み撃ち作戦のちょうど真ん中で重要なファクターとして輝くニールこそが、真の主人公であることを物語の最後に気付いた時、もう一度この映画を見返したいという気持ちにさせられた。一言一言の重みが凄すぎて、たまらないシーンだった。
是非、もう一度最初から見てニール目線で物語を追いかける事をオススメしたい。

さて、今度は少し惜しいなと感じたところを恐れず書きたい。
それはイケてるおじさん、ケネスブラナー演じるセイター、およびその妻キャットの人間模様の描き方。
まずケネスのヒール感が圧倒的に足りない。序盤でヨットから妻に落とされて主人公に助けられるシーンは唖然。なんだかチョロいとこちらに思わせてしまった所がいけない。笑
そしてそのまま、主人公&ニールvsセイターの決戦のような熱い展開はなく、任務としては主人公たちとは別のクロスカッティングで、夫vs妻の構図で静かなる戦いが見せられるのだが、当然もう一つの10分間戦争の勢いが凄すぎるので、こちらの人間ドラマ的な部分が薄い。ここはもっと膨らませて欲しかったかなと思う。ケネスブラナー好きな自分としては。笑
また、キャットは絶対殺すなって言われているのに殺しちゃうのかよっていうツッコミはやはりしたくなる。ノーラン監督の女性は感情的に動く!みたいな使い方をまたやってしまったなって感覚が否めない。
それはインターステラーの時も感じたが、こちらの場合は愛の力が裏のテーマで、最終的にそのおかげで計画が成功する兆しを含んでいるので話のベクトルを理解できたのだが、今回は個人的な縁故の気持ちがミッションに対して相反する効果を示している。もちろん主体性を持って憎き敵であったセイターを倒す事は何も間違っていないが、世界滅亡を阻止するという任務遂行を応援する側としてはおいおいっとなってしまった自分がいた。そこも含めて人間臭いドラマを見せたかったノーランの気持ちも理解できるが、それであれば世界滅亡などどうでもいいと思えるくらいとことんセイターを嫌な奴にしてキャットの抱える闇を描ききって欲しかったかなと思う。

と、色々突っ込みたく部分はあるのだが、それを差し置いても時間の魔術師はここまで来たかと感嘆する。この映画は間違いなくノーランじゃないとなし得なかったし、素晴らしい映像及び音響体験ができる。
これからも自分の大好きな監督である事は間違いない。
Cozy

Cozy