Cozy

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のCozyのレビュー・感想・評価

4.4
デモにあまり馴染みのない日本人にとってあまりにセンセーショナルで酷い史実がそこにはある。

コロナ禍の渦中、まさにニューヨークで起きているデモであったり、今も市民が犠牲になるニュースが流れるが、果たして遥か離れた日本の国に届いているこのニュースのどこまで真実で、どこからが虚実なのかは分からず、本作でもそのメディア操作ゆえの残酷さに焦点を当てて描かれている。いわゆる官軍、逆賊の世界ではないが、どちらが正しいのかは本当のところその場で体験したものにしか分からない。それを伝えるのが異国の記者であり、その送迎任務を負うソウルのタクシー運転手である。特に政治にさほど興味を持っていない普遍的な男の視点を通じて、湧き上がる感情の変化に心を揺さぶられる。

パラサイトでも感じた韓国映画の素晴らしいところであるが、前半軽いタッチで描かれていく全ての人間との関わりが、後半の重たさに拍車をかける形でずっしりと効いてくる。このような感情の変化を描く俳優として、ソンガンホが申し分ない役目を果たしている。

この作品は実話に基づいており、それ故に見終わったあとも悲しい気持ちは残るのだが、その感情に支配されるだけで終わっていないところに評価をしたい。
この映画のミッションが光州の人々の願いである報道任務遂行という、とても意味付けの強いもののため、それを妨げるものの猛攻が非常にスリルがある。特にタクシー運転手と軍のカーチェイスは斬新な映像体験であり、逃亡劇としての要素が本作への非常に香り高いスパイスとなっている。ハラハラドキドキもさせてくれるし、涙なしでは見られない、とても面白い映画を見ることができた。
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