かつきよ

2分の1の魔法のかつきよのレビュー・感想・評価

2分の1の魔法(2020年製作の映画)
4.6
かなりの良作。めちゃめちゃ深いし面白かったし、泣けました、、、!
さすがはディズニー、鑑賞前は完全に舐めていたのですが、ディズニーピクサーのクオリティの高さを改めて思い知らされた映画です。

世界観、人物像、演出、作り込みがとても丁寧で、メッセージ性もとっても強い。勢いも訴求力もあって、映画素人の私ですら色々に胸に刺さった作品。まだ気づいていない良さがたくさんあると思いますし、映画好きほど見るポイントがどんどん増えていくのでは?色んな人に見て欲しいし、自分でももう何度か鑑賞したいです。

単純に、ちょっと変わった冒険ファンタジー映画としても楽しめますし、その世界観を通して兄弟愛や家族愛、勇気や情熱、自分を信じること、認めること、ヒューマン(亜人だけど)ドラマとしても色んな大切なことを学べて、楽しめます。
これらを描こうとして、中途半端に着地する作品も何十と見てきましたが、完全に新規ストーリーで、アニメ映画一本の尺で、当たり前のようにさらっとこんなに沢山のメッセージ性を演出できるのは、やっぱり正直に言ってすごいですよね。

たくさんの人が考察・レビューされていますし、語ろうとすると大変なことになる質量の映画ですが、私なりに感じたことを少しでも書き留められたら、と思います。


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まずは、俗っぽい感想とおすすめポイントから!

◾️声優について

わかりやすさや言語文化的・直感的な馴染みやすさから、アニメ映画などは特に吹き替えでの鑑賞が多い私ですが、今作は絶対的に字幕をお勧めする理由が一つ!
主人公イアンの声は世界の孫トムホ!そしてバーリーの声優はクリプラ!!!
クリプラはもともと大好きで待ち受けにしてるくらいですし、クリプラを見るために鑑賞を始めたMCUのダーマンで、すっかりトムホの虜になった私には、もうもうもうもぅ、ご褒美すぎる配役!!!2人の掛け合い最高!!(;´༎ຶД༎ຶ`)うわぁ
英語の声優演技に関しては全然わかりませんが、絶対うまい(わかんないけど)
なにより、声質がキャラクターにとてもぴったりなんですよね!!
下心で字幕版鑑賞したのに、途中から2人の声だったことを忘れるほど、イアンとバーリーという2人に自然に見入ってしまった、、、
日本声優はそうでなくてもコレジャナイ感なキャストでもありますので(未鑑賞なので実際はどうなのかはわかりませんが、、、)私は是非とも世界的に言語版をお勧めいたします。是非!


◾️世界観について

「科学や技術の進歩と発展によって、かつては当たり前のように使われていた魔法が忘れ去られた世界。」

わかっててもワクワクする世界観!!!なんだそれ!!
冒頭、ピクサーのお得意のわくわくアニメーションと共に映し出される過去の魔法の世界観から、コミカルに科学へと傾倒していく様が単純に面白いし、面白がりながら世界観もわかっちゃう!こういう演出本当に安心と安定のクオリティ。
ぶっちゃけ一時期のラノベとかで流行ったことあるような、あるある感もある設定ではあるんですが、その設定の調理の仕方や魅せ方はやっぱり一流だし新鮮に感じました。なにより、本当にワクワクしました!マンティコアの店とか、まず設定が面白いし、どこか説得力みたいなのがあるんですよね。「こうはならんやろ😂」とならない。
なんというか、この、魔法が廃れた世界という設定自体がある意味もう伏線になっているのだ!ってレベルでちゃんと物語に生きてるんですよね。
設定、というか、説得力としては、もうむしろそういう世界を見せてもらってるんだ!っていう感じ。人間がモンスターに差し代わっただけで、ガワどけみると現代と変わらないような世界観なのですが、見れば見るほどかつては魔法が息づいていた世界なんだ、、、と見え隠れしているし、それが明らかになってゆく。いちいちコミカルだし、世界観の作り込みや見せ方は本当に面白い!
きっと皆同じように世界観に引き込まれるはず!魔法とか好きなら尚更!


◾️キャラクターについて

キャラクターデザインはそんなに好きじゃない!むしろ、なんでトロルっぽいんだろ、、、って違和感さえ感じていました。癖はあるし
なんなら、広告の雰囲気から、ディズニーとかピクサーとか関係ない全然新規のアニメスタジオの映画だと思ってたレベル
でも、最後まで見たら、もう、みんな大好きだしビジュアルとかもうそういう問題じゃなくなっていました。

イアンのキャラクターはわかりやすく典型的なおちこぼれ主人公。今時珍しいくらいの教科書のようなダメダメっぷりで、典型的すぎて、、、なんだこいつは!!!こいつの成長譚なんだろうが、こいつは成長したところで絶対好きになれん!!!と思ってしまいました。しかし、最後まで見たら(以下略)

バーリーは、広告でバーリー見てこの映画見よう!って思ったくらいにはビジュアルも好みだったし、クリプラと聞いてテンション爆上がり!
頼れるお兄さんキャラなのかな!と思っていたけど、初登場からやばすぎてちょっとだけ引きました、、、
やかましいし、ギークキャラ、、、。お節介?なんか癖があるんですよね。悪意なく主人公に迷惑をかけそうな感じ。。。
…なのですが、最後まで見ると(以下略)

この2人のキャラクター設定に関しては、最初こそ癖が強く感じるものの、単純なキャラ付けではなく、きちんとそうなった理由や成り立ちがあることを知るととてつもなく自然というか、かなり秀逸なキャラ設定であることがわかります。
特にバーリーに関しては、、、
この2人のキャラクタに触れていく映画での体験は、キャラ設定を知る、というよりは、現実世界でその人の過去や価値観を知って、成り立ちを知って、その人の人格や性格、生き方を自然に自分の中に受け入れていくような感覚に近いです。
説明されている、自分の中で2人について認識をあらためていく、というようなものではなく、知っていく、そして2人の印象が次第にシフトしていく感覚、、、とでもいうのでしょうか。。。

ネタバレにならない程度の設定で面白いなと感じたのは、最初うーんって思ったバーリーのギークキャラ設定について。
現実世界の価値観に照らし合わせると、TRPGヲタとか、カードゲームヲタとか、そっち系のギーク感を感じてしまったのですが、ここで違うのは、バーリーがはまっているゲームやファンタジーの世界観は、全て史実であり現実世界にあった歴史の一部なんですよね。
つまり、バーリーはファンタジーヲタ属性を抱きつつ、歴史ヲタ属性もあるんです。歴史ヲタっていうか、もう、それは普通に博識ってやつなのか!?ヲタでありながら博識!そんな筋肉担当みたいなガタイと声で、知識役なの!?っていうギャップ萌えも。
実はわたくし、漫画とかで、オカルト(とか中2)キャラ(異端扱い)が、実際オカルトな世界観になったあとに頼られたり博学キャラとして無双する展開は好きなのですが、バーリーの場合もそれに近いカタルシスを感じました。展開としても面白いですし、なによりバーリーが魔法の物語を牽引していく感じが、、、

こちらからすると、これ以上ないくらい頼りがいのあるナビゲーターなのですが、イアンがそういうバーリーに対してどんな態度でいるのか、どんな印象を持っているのか、、、そしてそられが物語を通してどう変化していくのか、、、
というね、2人の関係性がね、もうね!!!

あー、もう一回見たくなってきた!!
兄弟テーマは本当に好きなのですが、もうそれをね、遺憾無く発揮してくれる。アニメ映画の枠の中で!!!もう、、、、ぁぁぁあ(;´༎ຶД༎ຶ`)
イアンが主人公だと思って見た人は多分びっくりするくらい、バーリーも相当に深い。
イアンのための物語であると同時に、これはバーリーのための物語でもあるんだなと気づいた時が、この映画で一番好きなシーンにつながります。
バーリーほんと好き。

とにかくこれに関しては実際に映画を見ていただきたい!!

あとはお母さん!みんな言ってるけど本当に好き。
あとは、マンティコア
まじ、ほんと好き!!!好きしかいない!!


◾️魔法について

映像としてまず楽しい。そこはピクサークオリティ。
映画一本を見てまず感じたのは、演出がどんどん加速しているところ。
最初は全然魔法描写がない!あるけど、なんだか物足りない、、、!しかし、後半になると今までの分を取り返すかのように、一気に魔法演出が多くなるんですよね。
この演出は映画のテーマや、主人公の成長譚としての演出を考えると、本当に徹底された演出術だなと思いました。

魔法とはなんなのか
魔法を使うためにはどうすればいいのか
三つの要素があるとバーリーが強調して説明してくれるのですが
その三つというのが

【心に火を灯すこと】
【自分を信じること】
【集中すること】

なんです。
最初なんじゃそりゃって思いましたけど、これ、ピクサーとかディズニーが今まで扱っていたテーマや、今回の作品のテーマに重なるところがありますよね。
魔法っていうのは、もちろん演出として、わくわくとして、ファンタジーとして存在していますが、それと同時に、この映画の中では主人公の成長を視覚的に、ストレートに表す装置でもあるんですよね。そして、ディズニーが今まで伝えてきたメッセージ性そのもののメタファーでもあるのかなと思います。そういう視点で見ると、一つ一つの魔法のシーンに意図を感じざるを得ない。
ただのファンタジー映画・魔法表現で収めない、演出一つ一つに意図を感じる。本当に安心と安定のディズニー。なんでこんなに安定して面白いのか謎。


◾️ストーリーについて

非常に現代的な舞台でありながら、ファンタジーの混在のさせ方の温度感は非常に面白い。
魔法はあるけど、どこか親近感がわくキャラクターたちの、冒険譚。たったの1日の冒険なので、距離的には全然大冒険ってほどではないはずなんですけど、場面転換やシーンの盛り上がりが豊富なので、すごく壮大な冒険に感じられるんですよね。ロードムービー的な楽しさもあれば、RPGのダンジョン攻略的な楽しさもある。演出の手数が本当に多い!
これはストーリーについてっていうより総評に近いのかな、、、
面白いと思ったところ具体的に書くとネタバレになるのでこんな感じに、、、歯痒い、、、


◾️タイトルについて

ディズニーの日本語タイトルは従来そんなに気にいることはありませんが、今作においては日本語タイトルが本当に秀逸だなと思います。
映画を見ればわかりますが、1/2って色々な意味を内包しているんですよね。鑑賞前も、いったい何が1/2なのか気になるし、ひっかかりのあるいいタイトルだと思います。是非、何が1/2なのか感じながら見てみるのも面白いと思います。
映画のテーマや雰囲気にもあっていますしね!
原題のOnwardはストレートに訳すと前進。シンプルにそのままだなってタイトルですが、これもダブルミーニングとかになってるのかな?
Frozenとか、Tangledとか、ディズニーの原題ってなんかめちゃくちゃ単純なこと多いですよね。


◾️以下ネタバレ有り感想です!!!












◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ネタバレ有















◾️この映画の好きなシーン

足だけのお父さんが踊って空気を和ませるシーンとか、魔法で崖を渡るぐたりのシーンとか、この映画好きなシーンが結構多いです。
でも、やっぱりこの映画の評価が爆上がりしたのは後半にかけてでしょうか。

一見能天気というか、イアンのように深い悩みは抱えていなさそうなバーリーの過去のトラウマが判明するダンジョンのシーンは、魔法の世界の映画とは思えないほどに静かな生々しさがありました。
バーリーのキャラクタの印象が大きく変わるシーンでもあり、このあたりから映画の面白さが加速していくなと個人的な感じます。

そして、そのあと、旅の先がまさかの学校前だった!というシーンから
イアンはここで諦めてバーリーと決別するわけですが、ある程度経験のある方なら、所謂しあわせの青い鳥展開になるのはここで気づけるはず。
もし展開が予想できなかったとしたらそれはもちろんのこと、青い鳥的な原点回帰、灯台下暗しの落ちに繋がる展開って、それがまず面白いですよね。
言ってしまえばこの作品も、求めていたものが身近なところにあった、というオチに繋がるのですが、非常に面白いと感じ、且つ好きだなと思ったのは、このシーンで「実はずっと身近にあったんだ」と表現されるものは不死鳥の石だけではないんですよね。
あくまでそれは表面的、直接的な表現であり、実はここで同時に明かされるのは、イアンにとって、バーリーがどんな存在であったか。。。
完全に目的を諦め、父と会えたらやりたいことリストの項目に斜線を引いていくイアンが、文字を読みながら、実は自分が父に求めていた役割や思い出を全て、兄が自分に与え続けてくれていた事に気がつき、ボックスにチェックを入れていくシーン。ここめちゃくちゃ泣けます。本当に好き。

物語の表面的な部分としては「不死鳥の石」の演出で青い鳥を演出しつつ、しかし、何のために不死鳥の石を欲していたかというと、父に会いたかったから、、、
なぜ父に会いたかったかというと、(もちろん死んだ父に会いたいのに理由なんていらないのですが、、、)イアンはきっと、父に父性を求めてたんですよね。パパみを求めてたんですよ。それで、自分は父性を求めていたことにも気付くし、その求めていた「父親」という役割を、兄がかわりにこなして、自分に与えてくれていたことに気づくんですよ。
ここで、イアンの成長物語は言ってしまえば完結するわけです。表面的な探し物ではなくて、本質的な探し物を見つけたシーンですよね。ここ涙やばいです。。。
そして、ここからの流れがまた秀逸だし本当に好き。
イアンが完全に諦める中でも、バーリーは諦めずに探し続け、真実に向き合って追い求めて、不死鳥の石を手に入れる。これって、もちろん自分のためでもあるんですけど、きっとそれ以上にバーリーはイアンのために動いているんですよね。イアンの兄として、父として、、、

じゃあ、バーリーの父親役は?とか、バーリーのトラウマは?とか、それを一気に回収してくれるのがここから。イアンのための物語だと思っていた映画が、ここから一気にバーリーの為の物語でもあったことに気づくカタルシスやばすぎます。

というか、この辺りの伏線回収と演出のエモさやばすぎる。
サブストーリーで暗躍してたお母さんとマンティコアの合流もエモい。父を軸にした兄弟の話ではあるけど、母親がおざなりになっていないところがすごく好きです。ちゃんと家族単位にスポットを当てた話になってる。ものすごくうるさくて〜を見た時も、同じ感覚で、母親の介入のさせ方の温度感いいなと思いました。

不死鳥の石の噴水も、きゅうにぱっと出できたわけではなくて、ちゃんと冒頭から伏線が貼られているんですよねー。細かい!好き!!
オチで、身近な世界に求めているものがあった=身近で近代的な世界に実は魔法の歴史が隠れていた、と表現するのは、物語の世界観を体現する演出。一貫性があってとてもいい。
そしてドラゴン!!呪いでできたドラゴンの顔が、学校の壁のポップなドラゴンの絵の部分になる演出、この演出あるのとないので作品の完成度が全然違ってきますよね。一つ一つ演出がいちいちエモい!!!
マンティコアが旅に参加するのもちゃんとドラゴン討伐に話が繋がってるし、最後のシーンは物語のピースがカチリとはまっていく感じで心地よい。

そして、最後の最後ですよー
ここがこの映画で一番好き。神映画だなって思ったシーン
父親との再会のシーン!!!

イアンは、自分ではなく、バーリー優先で父親と会わせる選択をするんですよね。これ、一歩間違えたら、なんで?ってなる設定だと思うのですが
つまり、イアンが父親に会いたかったのは父性を求めていたからであって、それはバーリーが与えてくれていたことを知ったイアンは、もう探し物は見つかった状態なんですよね
もちろん父親に会いたいし、話したいこともいっぱい、あったと思います、、、
それでも、バーリーを優先して父親に会わせたのは、きっと、本当に父親が必要なのは、バーリーだと思ったからですよね。
バーリーはずっと自分の父親がわりをしていてくれたけど、バーリーは父親がわりは居なかった訳で、ずっと父を失ったままだったこと。それどころか、バーリーは父親との別れのことで、寂しさや喪失感以上に、後悔とトラウマを抱えている。だからこそ、父親に真に会うべきは兄なのだと、今までずっと自分のために動いていたイアンが、ここで初めて、バーリーのために奮闘するわけです。自分は父に会えないかも、という可能性を受け入れて、バーリーと父親の再会を叶えるためだけにドラゴンを斃すんですよ
エモすぎて血涙

そして、ドラゴン討伐の後の演出が神域
こういう系の話って、結局死んだ父親とは会えなくて、でもかけがえのないものに気づけたから終わりとかいう妙に現実的なオチか、冒険の末父親と会えてよかった!感動!みたいなオチかのどっちかだと思うのです。どちらも好きだけど、、、そういう話はもう何億とあるし、まあそうなるよな、感は否めないのですが、ここにきてこの映画で、本当に言葉どおり、脱帽だ、、、と思ったポイントはまさしくここ。

結局父親とは会えるんですけど、それも黄昏時のほんの束の間の間
会うのは、バーリーだけなんですよね
イアンは瓦礫の隙間から、2人の影を遠目に見るだけ。声もよく聞こえないし、姿すらきちんと確認できないけど
ここでのイアンの顔が最高にいい
会いたかったのに、悔しい、もどかしいとかじゃなくて、
兄がちゃんと会えてるか心配、ちゃんと話せてるか心配、そういった表情
そして2人が抱き合うシーンで、安堵の表情をするんですよね
心から兄を思っているからこそできる顔だな、と私は思いました。

普通は全てを把握できて、物語をすっきり楽しめる、そんな映画っぽいのに、再会のシーンは突然イアン視点でしか物語が観測できずに、バーリーと父が実際、具体的にどんな話をして、どう言う言葉を紡いで、どんな顔をしていたのかは、想像はできても正解はわからないんです
魔法って一見なんでもありで、とんでもない世界観のように思えるけど、この演出は、なんでもありじゃなくて、どうしようもないことがある、叶わないことがある、そういう現実的な厳しさや不可逆性、どうしようもなさがはっきりと感じられるシーンだなと思います。しかし、それでも救いや夢はちゃんと与えてくれる、神演出だなと思うのです。

これ以上ないもどかしさ、、、これ以上ないもどかしさのはずなのに、これ以上なく、幸せな気分になれる
あーもう、この映画本当にいい映画だったなって思える満足感がやばいです
もう一回見よう!そう思えるとてもいい映画です!
最後家族写真でしめくくられるのすこすこのすこ
考察サイトでサイト主さんが言ってましたが、イアンは父似で、バーリーは母に似てますね

バーリー本当すこ
かつきよ

かつきよ